「ヤクルト３‐１広島」（２３日、神宮）

　涙目になりながら、無我夢中で腕を振った。ヤクルトのドラフト４位、新人の江村が乱闘劇を乗り越え、プロ初勝利。ベテラン前田智の怒りを買い、複雑な表情を浮かべながら「（初勝利は）うれしいのはうれしいです」と喜んだ。

　同点の八回、２死一、二塁。打席に前田智を迎え、出番が回ってきた。広島出身の左腕にとって、幼少時代からあこがれてきた偉大な選手。「腕を振ろうと思った」と厳しい内角攻めを続けた結果は、左手首付近への死球。前田智が鬼の形相で詰め寄ってきた。

　両軍入り乱れての騒ぎとなり「（涙目に）なりますよね。やばいと思いました」と江村。古沢投手コーチが自軍の荒木投手コーチの胸ぐらをつかみ、退場処分となった。

　それでも、荒木投手コーチから「思い切りいけ」と続投を指示され、ルイスを空振り三振。ピンチをしのぐと、その裏に味方が勝ち越し、勝利が転がり込んだ。ルーキーの力投もあり、チームの連敗も５でストップ。江村は「前田さんには申し訳ない」と言いながらも、ウイニングボールを大事そうに握りしめた。