済美・安楽、初戦で自己最速153キロ
「高校野球・愛媛大会2回戦、済美7‐1帝京五」(17日、坊ちゃん)
愛媛大会では、今春センバツ準優勝の済美のエース・安楽智大投手(2年)が、今大会初戦となる2回戦の帝京五戦で先発し6安打1失点、14奪三振で完投勝利を収めた。直球は自己最速の153キロをマークした。
怪物は進化していた。四回2死。安楽が相手6番打者に投じた4球目だった。外角低めの絶好のコースで三振を奪った剛速球は153キロをマーク。夏の初戦でいきなり自己最速を1キロ更新した。
「しっかり腕を振れた。最速更新は目標の1つだったので、素直にうれしいですね」
九回2死から1点を失い、完封は逃した。それでもチームを勢いづける6安打、14奪三振の完投勝利。試合後は「甲子園につながる大事な1勝です」と誇らしげな笑みを浮かべた。
地道に続けた肉体強化の成果だ。センバツ後、さらなる球速アップを目指して下半身をいじめ抜いた。学校グラウンド横の河川敷でダッシュを繰り返し、練習後も毎晩、自宅近くを走り込んだ。
筋力トレーニングにも励み、以前は20%以上あった体脂肪率が「12%前後になった」と、済美のトレーニングコーチを務める「ランクアップジャパン」の吉見一弘代表は証言。体を鍛え抜き、剛速球は威力を増した。
772球の熱投で注目を集めたセンバツ後は、周囲の変化に戸惑いもあった。テレビをつければ自身の投球シーンが流れ、ネット上では『球数問題』が議論されていた。学校グラウンドには連日、報道陣が訪れた。「期待がプレッシャーになっていたかも。家でも黙り込んでいました」と母・ゆかりさんは振り返る。
センバツで負傷した右手首が癒えるまで1カ月を要し、夏に向けた調整が遅れた影響もあった。5月18日の鳴門渦潮との親善試合では5回6失点。練習試合で打ち込まれることが多く、焦りを募らせていた。
イラ立ちが表情に表れるようになった安楽に、カツを入れたのが上甲正典監督(66)だ。「エースがそんな態度でいいのか!」。その一言で目が覚めた。
この夏、最大の目標は、浦和学院に1‐17の屈辱的大差で敗れたセンバツ決勝の雪辱。猛暑の中でも1人で投げ抜く覚悟だ。「これからも甘くない試合が続く。センバツの悔しさを晴らすために甲子園に行きたい」。安楽のリベンジへの挑戦が始まった。