済美・安楽157キロ!逆転で聖地王手
「高校野球・愛媛大会準決勝、済美3‐2川之江」(26日、坊っちゃん)
愛媛大会では、センバツ準優勝の済美が川之江に逆転勝ちし、3年ぶりの決勝進出を果たした。エース・安楽智大投手(2年)は、六回に自己最速を3キロ更新する157キロをマーク。序盤に2点を先行される劣勢ムードを剛速球で吹き飛ばし、終盤の逆転劇を呼び込んだ。済美は春夏連続の甲子園を目指し、27日の決勝で、3年連続優勝を狙う今治西と対戦する。
たった1球で、球場のムードをガラっと変えた。六回2死。済美・安楽が相手4番・大西達に投じた3球目だった。外角低めいっぱいで三振を奪った剛速球が157キロを計測。観客席から「ウォー」という大歓声が沸き起こった。
「チームに流れを呼ぶために(自己最速の)155キロを目指した。どよめきで流れを呼ぼうと思った。157キロは、その結果です」
エースの気合が伝わった。こん身の1球が、沈黙していた打線を奮い立たせた。八回に1番・山下が追撃の左越え本塁打。1点差で九回に突入すると、3安打で同点に追いつき、最後は2番・林幹の右犠飛で勝ち越した。同点打を放った金子は「157キロを見て、もう勝っても負けてもいいと思った。自分たちも思い切っていこうと思った」と興奮気味に振り返った。
雷雨で試合開始が10分遅れ、三回途中から64分間の中断。再開直後に2点目を献上するなど、序盤は嫌な流れが続いた。4番打者としては5打席で4四球。うち3つは敬遠と、完全に勝負を避けられた。
そんな徹底的な“安楽対策”をはね返す逆転劇。日本人選手では、プロではヤクルト・由規、高校生では花巻東・大谷翔平(現日本ハム)しかマークしていない160キロ超えに、また一歩近づいた。「野球をやってきた中で一番いい球だった」。勝利を呼び込んだ1球を自画自賛した。
春夏連続の甲子園出場をかけ、決勝は今治西と対決する。昨夏は準決勝で対戦。2‐3で競り負けた相手だ。
その試合、1年生で背番号「18」だった安楽は「8番・投手」で先発出場した。九回2死二塁の同点機で打席が回ってきたが、フルカウントから空振り三振。最後の打者となり「先輩たちに申し訳ない」と号泣した。
その悔しさは忘れていない。今年は3年生に同じ思いをさせたくはない。「次は158キロを出したいけど、決勝戦は勝つことしか考えない。しっかり準備したい」。勝利だけを追いかけ、怪物は右腕を振る。