済美・安楽、155キロも「情けない」
「全国高校野球・2回戦、済美9-7三重」(14日、甲子園)
2回戦4試合を行い、センバツ準Vの済美(愛媛)が、9‐7で三重を下し初戦を突破した。MAX157キロのエース・安楽智大投手(2年)は、初回に155キロをマークしたが、九回に連打を浴びてまさかの5失点を喫するなど、11安打7失点(自責6)。苦しみ抜いた137球で、夏の1勝を手にした。
お立ち台の上で、怪物右腕は苦笑いを浮かべた。「最後は情けないピッチング。(100点満点で)10点です」。九回に5失点。連打の嵐をなんとか切り抜け勝利を手にした済美・安楽は、反省の言葉を並べた。
センバツ準V右腕の夏初戦。4万7000人の視線は、スコアボードの片隅に集中した。初回、いきなり出した。三重の5番・島田への4球目が155キロを計測。スカウト計測をのぞき甲子園の球場表示に限れば、2007年夏に仙台育英・佐藤由規(現ヤクルト)が出した甲子園の最速タイ記録。どよめく観衆だけでなく、バックネット裏のNPB12球団、メジャー3球団のスカウト陣にも剛腕を見せつけた。
初回に2失点。その後は0を並べたが「スピードガン以上に球がいかない」という嫌な感覚は続いた。スライダーの切れも欠き、偏りがちになった直球を狙い打たれた。
9‐2で迎えた九回。先頭の4番・宇都宮に右前打を許し「ヤバイと思った」。三重の逆襲を食らい、5本の長短打を浴びた。最後は2点差まで詰め寄られていた。
「実は肩甲骨に炎症があって、県大会のあとしばらく投げられなかった」。試合後、上甲正典監督(66)が明かした。5試合を投げた愛媛大会後、安楽は右肩の背中側に違和感を訴えていた。
ノースローを続けて回復を待った。6日に発熱で休養したが、深刻だったのは右肩の方だった。初戦が大会第7日となった日程が幸いし、炎症は軽減。急ピッチの仕上げで初戦を迎えたが、調整遅れの不安が最終回に出てしまった。
試練の九回、安楽を支えたのは「3年生と1日でも長く野球をしたい」という思いだ。12日の練習前に上甲監督に呼ばれ、諭された。「ここまで来られたのはお前だけの力じゃない。この大会は3年生のために投げろ」。その言葉が胸に響いた。自己最速158キロへの過度なこだわりを捨て「勝利優先」を心に誓った。
3回戦は第10日、花巻東との対戦が決まった。中2日の厳しいマウンドだ。「きょうは3年生が打ってくれたおかげで勝てた。次は恩返ししたい」。エースは言葉に力を込めた。