有田工・藤川、痛みも忘れ“プレー”

 「全国高校野球・2回戦、常葉菊川5-3有田工」(14日、甲子園)

 手術痕に残る鈍い痛みも忘れていた。九回無死一、二塁。伝令役を務めた背番号6は、マウンドへ一目散に駆けた。「ここを抑えたら必ず逆転できるから」。願いは通じなかったが、有田工(佐賀)・藤川周内野手(3年)の精一杯の“プレー”だった。

 アクシデントが襲ったのは、開幕試合の大垣日大戦。3番遊撃で先発出場した藤川は五回裏、胸に痛みを覚え急きょ交代。西宮市内の病院へ搬送されると「左肺気胸」と診断された。その日のうちに緊急手術。肺を圧迫していた空気を抜くため、肺にパイプを通した。

 交代時は0‐3のビハインド。夏の終止符を覚悟した。「最後までプレーできなくて悔しい」と、病室で父・清記さん(49)、母・睦美さん(48)とともに涙に暮れた。だが、手術室から出ると仲間が逆転星を運んできた。

 約1週間の入院を経て、戻ってきた甲子園。出場はドクターストップとなったが、外泊許可が下りベンチ入りが許された。「肺に菌がたまる」と医師から大量の発汗は控えるよう言われていたが、ベンチ最前列から身を乗り出し、声をからした。「自分のことより大事だった。試合に出られなくて悔しかったけど、それ以上に、みんなが頑張ってくれたことがうれしい」と涙を浮かべた。

 卒業後は、鉄道整備などの道に進むため、JR九州への就職を希望。野球を続けるかは未定だが、「苦い思い出も、うれしい思い出も、いろんなことを経験できた夏でした」。すがすがしいまなざしで、聖地を去った。

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