津商旋風!初出場で強豪智弁和歌山撃破
「全国高校野球・1回戦、津商9-4智弁和歌山」(9日、甲子園)
1回戦4試合が行われ、春夏通じて初出場の津商(三重)は積極的な攻撃で得点を積み重ね、春夏通算3度の優勝を誇る智弁和歌山(和歌山)に逆転勝ちを収めた。三重勢は夏通算30勝目で、和歌山勢は4年連続で初戦敗退。
スタンドの風が津商に向いた。強豪・智弁和歌山に立ち向かう公立校の一挙手一投足に大きな拍手が起こった。その空間を作り上げたのが、指揮を執る宮本健太朗監督(37)。歴代最多の63勝を誇る高嶋仁監督を圧倒するタクトを振るった。
「きょうは運が向いてるなと思ったので、感性を信じました」と笑った青年監督。仕掛けたのは1点差に迫った四回、2死一、二塁からダブルスチールのサインを出した。「あそこがキーポイントでした。選手に普段通りやることを示したかった」。結果はアウトになったが、この指示が選手たちを勢いに乗せた。
中盤までに試合をひっくり返すと、八回には1死満塁、カウント2-2から奇想天外のヒットエンドランを仕掛け、ダメ押し点をもぎ取った。九回にも浮き足立つ相手内野陣を見て連続スクイズを敢行し、見事に成功。弱者が強者を飲み込む戦術に「選手が本当によくやってくれました」と宮本監督は言う。
抽選が決まった後、ミーティングで「監督の勝負をしたら100対0。何とか高嶋さんと宮本の差を縮めてくれんか」と選手たちに語りかけた。その言葉に宮本監督を慕って入部してきた子どもたちが奮起。学校関係者が「人をその気にさせる天才」と語る“魔法のタクト”が、聖地に全力校歌を響かせた。