素振りが進化!立命大連覇の原動力に

 ミスターこと長嶋茂雄巨人終身名誉監督や、阪神の新監督に就任した金本知憲氏が現役時代、最も重視した練習が素振り。そのトレーニングを研究し、「しっかりボールを見なさい」というフレーズを基に「素振り支援システム(VR打撃装置)」を開発したのが立命大総合科学技術研究機構・樋口貴俊特別研究員(31)だ。実際に硬式野球部では一部選手に導入し、スイングのデータを活用したことで打撃力が向上。今年、関西学生野球リーグで春秋連覇を達成した要因は、洗練された基本練習にあった。

 プロのスカウトが立命大の選手を見てこうつぶやいた。「素振りがしっかりしている」-。今季、関西学生野球リーグで春秋連覇を達成した立命大。打撃のチームへと変えたのが、今年1月に就任した後藤昇監督(55)が提唱した“素振り”という基本練習だった。

 「大学はプロみたいに実戦形式の打撃練習や、打ち込めるスペースも用具もない。今の環境の中でできることと言ったらスイングしかない」と指揮官。ただバットを振るだけではない。「しっかりと投手をイメージして振れ」という方針を基に、あるデータをスパイスとして加えた。

 何も意識せず全力で振ったスイングスピードをMAXとすると、投手を見てのスイング、ティー打撃は90%。フリー打撃は80%の力でしか振れない。さらに実戦で変化球がミックスされタイミングを崩そうとしてくる中では、よりヘッドスピードは落ちる。

 こんなデータを提示したのが、立命大で打撃動作を研究してきた樋口氏。レギュラーと控え選手の打撃力を分析した際、違いとなって浮き彫りとなったのがボールを視認した上でのスイングスピードだった。その事実を就任直後の後藤監督に伝え「試合でMAXの力でバットを振れるように」を合言葉にスイングを重ねた結果、チーム打率は大幅に向上した。

 さらにもう一つ、アクセントを加えたのが樋口氏が開発したVR打撃装置。「生きたボールを数多く打つのは不可能なので、バーチャルの投球に合わせて素振りができれば」と特殊なゴーグルを装着すればグラウンドの風景が眼前に広がる。

 これを一部選手に導入し、スイングを矯正してきた。素振りの際、ほとんどの選手が打つポイントを注視する。投手をイメージし、ボールを仮想してスイングする選手はプロでもごく一部しかいない。だがバーチャルでは投手と正対しないと、相手はボールを投げない。投手をしっかり“見る”ことから一連の動作は始まる。

 そこで習慣をつけ、意識を続けることでスイングスピードは飛躍的に上昇。ボールが来てもMAXに近い状態でスイングできる。確かに長嶋氏や金本氏も現役時代、映像を見るとしっかりと投手の方を見てバットを振っていた。一流打者が愛した素振りという練習法。一見は地味でも、計り知れない効果を生む。

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