尚成、日米93勝のDNAが置き土産
「第二の人生、プレーボール!」
だれもが大きな夢と希望を胸に抱いて飛び込んだプロの世界だ。十分にやり尽くしたと納得してユニホームを脱ぐ選手。野球への未練を断ち切るのに長い時間を要する選手。そんな彼らの第二の人生へ。エールの思いを込めてプレーボール!
日米で奮闘した16年間のプロ生活に、DeNA・高橋尚成投手(40)が別れを告げた。「ベイスターズではつらい思い出しかない。中畑監督の力になれなかった」。引退会見。悔しさを押し殺すようなサバサバした表情で、振り返った。
勝ち星に見放されていた。DeNAでの2年間で16試合に登板。その全てで、チームは敗れた。今季はシーズン途中に「チームの役に立てるなら」と先発へのこだわりを捨て、米球界時代の主戦場であるリリーフを志願した。献身的な思いも実を結ばなかった。
結果が伴わなかった2年間。だが、残した財産がある。新人の石田は実戦での高橋の投球を研究。「投げる球種も一緒ですし、同じ左。僕も球が速いほうじゃない。いい勉強になりました」と振り返る。生きた教材は、請われればアドバイスを惜しまなかった。
10月2日の引退試合。マウンドの後ろに手を当てた。「16年間、あそこに立たせてもらった。感謝を込めて“ありがとう”という言葉を書きました」。日米通算93勝。その遺伝子を後輩に伝えて、グラブを置いた。