オリックスで10億円稼げる男とは…
オリックスで年俸10億円稼げると言われたら誰を想像するだろうか。金子千尋、T-岡田、糸井嘉男、中島宏之…。その誰でもなかった。ドラフト10位の杉本裕太郎外野手(24)=JR西日本=がその人だと言うのだ。
証言者は田口壮2軍監督。メジャーリーグでプレーした経験からこう言った。
「アイツは10億円稼げるよ。俺なら日本にいない。とっくに向こうに渡ってるよ。そのくらいのモノは持ってる。あとはココかな」
自分の頭を指さして言った。向こうとはもちろん海の向こう、メジャーリーグのことだ。杉本はドラフト最下位の選手。何がそんなに魅力なのか。証言を集めてみた。
福良淳一監督は「あの肩は現役時代の田口(2軍監督)やイチロー(マーリンズ)と同じじゃないですか」と強肩を褒めた。本人によると「遠投は苦手なんです」と大した記録はないらしい。ただし、外野から本塁などへの送球は低くて速い。まさにレーザービームのよう。春季キャンプを視察に訪れたイチローが在籍するマーリンズの首脳陣もほれ込んだほどの“ストロングアーム”だ。
次は福本豊臨時コーチ。「当たったらブランコくらい飛ばしよる。あれはオモロイよ」。190センチ、92キロの恵まれた体。当たれば確かに同僚ブランコかと見間違えるような強烈な打球を飛ばす。ただ、実戦では当たらなかったため早々に1軍キャンプを外れ2軍落ちとなった。粗いのだ。
さらにもう一つ。福良監督に報告されたスカウトの評価は「磨けばソフトバンク・柳田になる逸材」だったそう。長打力、強肩はチームトップクラス、足も悪くない。確かにひと皮むければ面白い素材のようだ。
もう一つ、杉本には天性の素質がある。それは取材の受け答え。入寮時に自ら漫画『北斗の拳』好きを披露。グラブなど持ち物のあらゆるところに「尊敬してやまない」という敵役ラオウのセリフを刺しゅうなどであしらう。すでにチームメートからは「ラオウ」と呼ばれるようになった。
取材対応でもイチローとの合同自主トレを聞かれれば「昇天しそうでした」と“北斗の拳”語で回答。あるコーチが間違えて「おい、ケンシロウ」と呼んだ際には「ラオウです」と訂正。また、キャンプ1軍スタートが決まった際には「プロ野球の世界も北斗の拳と同様に群雄割拠、弱肉強食の世界ですから僕も生き残っていきたい」などなど、なりきり度は筋金入りだ。
言葉でも周囲を魅了する?“逸材”は現在2軍で鍛錬する日々。最大の課題であるドアスイングが改良されれば、一気にスターへの階段を駆け上がっていくかもしれない。(デイリースポーツ・達野淳司)