鹿実、逆転快幕星 横田先輩やりました
「選抜高校野球・1回戦、常総学院2-6鹿児島実」(20日、甲子園球場)
開会式と1回戦3試合が行われ、第2試合では2季連続出場の鹿児島実が初戦突破を果たした。2点を追いかける展開となったが、プロ注目の4番・綿屋樹内野手(3年)を中心に、中盤の集中打で常総学院(茨城)を逆転。OBの阪神・横田慎太郎外野手(20)に負けない全力プレーで、好発進した。
脈々と受け継がれてきた伝統の力で一気に相手をのみ込んだ。同点の五回2死一塁。フルスイングした打球は深々と右中間を割った。勝ち越しとなる一塁走者が生還。しかし殊勲打の綿屋は「打球ばかり見ていたのでベースを見ていなかった」と一塁ベースを踏まずに通過。慌ててベースを踏みに戻った。
二塁打が単打になってしまったが、高校通算20発のパワーを見せ付けた4番。「(浜田)部長先生から『一発狙ってこい』と言われていた。大事な場面で1本打てたのでよかった」と少し頬を緩めた。
2点をリードされても慌てなかった。四回に集中打で同点、五回に勝ち越し、六回には追立壮輝外野手(3年)の左越えソロ。昨春センバツで8強入りした常総学院の好左腕・鈴木を攻略した。
ここぞの集中打はOBの阪神・横田も経験した厳しい鍛錬のたまものだ。朝6時からの早朝練習は常に上半身裸。真冬でも凍える寒さの中、ナインは素振りを繰り返す。携帯電話の使用も禁止。ストイックな生活を送る綿屋は「自由なチームに負けたくなかった」と明かした。
先輩の活躍も励みになっている。オフに母校を訪問した横田から「頑張れ!」と激励された。今大会前には段ボール5箱分のゼリー飲料の差し入れが届いた。宿舎ではオープン戦の雄姿をスポーツニュースでチェックし、盛り上がるのが選手たちの日課。「横田さんはどんな練習でも嫌な顔をせずにチームを引っ張っていたと聞きました。僕らもキツイ時は大声を出して走ってます」と、九回にダメ押し打を放った中村天外野手(3年)。“魂”は受け継がれている。
冬場は3キロの鉄の棒を振り込んだという綿屋は「旅館の食事がメチャクチャおいしくて食べ続けたいって、みんなで言ってます。そんなことですぐ燃えるチーム。いい思いをしたかったら、絶対結果を残そうって」とニヤリ。がむしゃらで泥くさく、古き良き時代の香りを残す薩摩っ子軍団。初優勝した20年前のような快進撃をもくろむ。