智弁学園初V 熱投・村上打って決めた

 「選抜高校野球・決勝、智弁学園2-1高松商」(31日、甲子園)

 決勝戦が行われ、智弁学園(奈良)が2試合連続のサヨナラ勝ちで、春夏通じて初めて全国の頂点に立った。全5試合を1人で投げ抜き、延長十一回にサヨナラ打を放って激闘に終止符を打ったのはエース・村上頌樹投手(3年)。「もう一つの智弁」から脱却し、「歴史を変えよう」を合言葉に突き進んできたナインが伝統の力を撃破した。

 快音を残した打球が聖地の空に舞った。一塁走者の高橋直暉内野手(3年)が懸命にホームへかえってくる。二塁を回った村上の目に飛び込んできたのは、球審が両手を大きく広げた姿-。大きく右拳を振り上げたエースのもとに、チームメートが涙を流しながら次々と飛び込んできた。

 「何が起こったか覚えていません」と、歓喜の輪で雄たけびを上げた村上。延長十一回、2死一塁から「直球だけを狙っていた」と初球を完ぺきに捉えた。

 打球はセンターの頭上を越え、一塁走者が一気に生還。「サヨナラは人生初めて」と声を弾ませた右腕にはもう、投げる力は残されていなかった。

 全5試合を1人で投げ抜き、全投球数は669を数えた。「下半身に力が入らなかった」と終盤はボールが高めに浮いた。球場全体も高松商の声援に染まったが「抑えたらどうなるのかなと。もう気持ちだけでした」。追い込まれても、決して心は折れなかった。

 それを支えていたのは男の意地-。3年前、高校進学を控えた村上の第一志望は、3度の全国制覇を誇る智弁和歌山だった。だが、174センチの身長を理由に2人の県外出身者枠に入れなかった。

 智弁学園に進学後、同じ境遇の仲間たちと出会った。「智弁と聞いたら誰でも和歌山と言われる。それなら優勝して自分たちの代で変えたい」。村上は毎朝5時に起きて坂道ダッシュを繰り返した。全員が黙々と自主練習に取り組んだ。

 「歴史を変えよう」。そう誓い合った仲間たちが結束し、手にした紫紺の大旗。自身も智弁和歌山を志望しながら道を閉ざされた小坂将商監督(38)は「選手を褒めてやりたい」と目を細める。

 「歴史は変わったと思います。この学校を選んで本当によかった」と、誇らしげに胸を張った村上。悔しさを糧に駆け上がった智弁学園に、春の聖地は優しくほほ笑んでくれた。

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