高松商・安西、祖父に見せた古豪復活
「選抜高校野球・決勝、智弁学園2-1高松商」(31日、甲子園)
伸ばしたグラブの先を、サヨナラの打球が抜けた。「ポテンが落ちたら…と思って、前めに守っていた。裏目に出てしまった」。土壇場でのわずかな判断ミス。超満員の三塁側アルプスの期待に応えられず、高松商・安西翼外野手(3年) は「優勝をプレゼントしたかった」と悔しがった。
古豪の歴史を感じて育った。祖父・忠之さん(77)は高松商OBで、55、56年のセンバツに出場。家には甲子園の写真があった。聖地を目指すなら高松商というのは自然な流れ。入学する際、祖父には「自分も甲子園に出とるけん、お前も出ろよ」と励まされた。
60年の時を経て、同じ舞台に立った。1、2回戦は無安打。だが、そのままでは終わらなかった。準々決勝は3安打。決勝も3安打を放った。十回無死一塁からはノーサインで盗塁にも成功。長尾監督は「ここで盗塁できたらなと思っていた。よく走ってくれた」と称賛した。
アルプスの大応援で痛感した、伝統の重みと聖地の重圧。それを真っ正面から受け止め、5試合を戦った。「自分で考えてやる大事さをプレーで表せた。サインなしで走れたのは自分にとっての成長」。そう胸を張った孫の姿に、忠之さんは「打ってくれてよかった。勝負は時の運。感謝しています」と目を細めた。確かにしるした古豪復活の一歩。夏にはまた、新たな歴史の一ページを紡いでみせる。