コボスタの観覧車にボールパーク化思う

 何とも不思議な光景だった。5月3日。楽天の本拠地・コボスタ宮城の新名所となる観覧車が営業を開始した。球場の左中間席に位置する観覧車のゴンドラからは、グラウンド全景や仙台市内の町並みを一望できる。

 メジャーでは、デトロイト・タイガースの本拠地コメリカパークでは球場の外周施設に、観覧車とメリーゴーラウンドが設置されているが、グラウンドを見渡せる観覧車は世界でも類を見ない。

 開業初日の3日は最長で50分待ち。やはり、列には多くの子供たちの姿が見られた。注目しているのは子供たちだけではない。プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーも「(今後の視察で)仙台を訪れる予定なので、ぜひ僕も乗ってみたいね」と高い関心を寄せている。

 球団側は当然、集客力アップが狙いではあるろうが、こうした試みは野球が置かれる現状にも大きな意味を持つように思える。

 「サンフランシスコの球場(ジャイアンツの本拠地・AT&Tパーク)へ行ったときも、右翼席後方の海には何艘(そう)もの舟がいて、ホームランボールの取り合いをしていたね。日本の球場も、そうしたボールパーク化が今後も進んでいくだろう」と熊崎コミッショナーは話す。

 現在ではテレビ地上波の野球中継は減り、他のスポーツを目にできる選択肢が増えた。若年層での競技人口が減少しているように、野球を見ることが“慣習化”されていた時代ではなくなっている。

 野球の試合時間は約3時間。その時間の過ごし方、球場へ行く目的の選択肢を増やすことは重要な要素だ。

 小さな子供たちが3時間も野球だけを見続けるのは大変かもしれない。ただ観覧車などで楽しみながら、いつも傍らに野球がある。球場へ行くのが楽しかった記憶が残る。それも十分に野球振興と言えるのではないか。

 わずか10年前は遠くに響いていただけの「ボールパーク」という言葉。他球団でも、さまざまな試みで独自のテーマパークを作りつつある。球場にそびえ立つ観覧車。不思議に思えた光景は、子供たちの笑顔とともに溶け込んでいくだろう。(デイリースポーツ・中田康博)

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