コリジョンルール導入の経緯を考えよう
今季から導入された本塁上での衝突を禁止する「コリジョンルール」が物議を醸している。プレーする側も判定する側も難しいルールであることから、運用や判定に対して否定的な意見も多い。そこで、あらためてルール内容や適用例とともに、導入に至る経緯などを振り返ってみた。
ルール自体は、捕手を含めた守備側の選手が走者の走路をふさいでブロックすればセーフ、走者が故意に守備側の選手へ接触した場合にはアウトが宣告され、当該の選手に警告が与えられる。ただ実際の運用となれば、そう単純な話ではない。
5月11日の阪神-巨人戦(甲子園)では、三回に捕手・原口のプレーがコリジョンルール適用となり、判定がアウトからセーフに変わった。原口が中堅からの送球を捕球するために後ろに下がり走路をふさいだため、ルールが適用された。
審判員は、原口が後ろに下がらずとも捕球できたと判断。微妙な判定ではあった。
一方で6月15日のヤクルト-ソフトバンク戦(神宮)。七回無死二、三塁から一塁ゴロで捕手・鶴岡は本塁上で送球を受けたが、完全なアウトの場合にルール適用外になることから、リプレー検証後も判定はアウトのままで変わらなかった。
コリジョンルールは当該審判員の判断によるところが大きいため、選手やファンには結果に至る理由が分かりづらいのも事実だ。
現在も審判員は試合ごとのミーティングなどで検証を重ね、交流戦からは場内アナウンスで詳細な説明を行うようにするなどの取り組みを続けている。円滑なルール運用は今後の課題となるだろう。
同ルールに対しては「野球がつまらなくなる」という声も選手や球団から聞かれる。そこで、あらためて導入の経緯を振り返りたい。
重要なのは、選手の故障防止が目的であり、ルール導入の起点にあるのは選手会や球団からの要望だったという点だ。ルールの運用方法決定には選手や球団の意見も取り入れられている。その上で今年1月に12球団の代表者に、2月のキャンプで選手らにルールが説明された。球界全体で求めたルールという原点を忘れてはいけない。
14年から試験導入した米大リーグも初年度は適用範囲などが問題視された。安定運用には時間を要する。課題は多い。ならば、もう一度、全体で意見を出し合うのも1つの方法だろう。皆で選手の安全を守るために決めたルール。だからこそ、皆でより良いルールにする議論を続けてもらいたい。