ヤクルト・由規 悔しさと充実の復活
「ヤクルト2-8中日」(9日、神宮球場)
KOに浮かべた涙もこの日ばかりは意味が違った。度重なる右肩の故障を乗り越え、これが5年ぶりのマウンド。「勝利では飾れなかったけれど、やっと、本当にスタートを切れた」。大歓声に迎えられたヤクルト・由規は悔しさに充実感を同居させ、目を潤ませた。
復帰までに似た、試練の展開だった。いきなり先頭の大島に二塁打を浴び、犠飛で失点。六回途中で降板するまで、毎回の10安打を浴びた。それでも「投げられる喜びをかみしめた。幸せだなと」。かつて161キロをたたき出した直球は最速149キロ。それでも丁寧な制球と切れで4三振のうちの二つを直球で奪った。
5年前。故郷東北が震災に見舞われた半年後から、由規はマウンドから消えた。右腕の復活はたびたび復興と重ね合わせられてきた。この日も地元宮城から家族らが見守り「まずは投げる姿を見せられた。次は勝利を届けたい」と誓った。