W杯5連覇へ…田中露朝「マドンナジャパン」新エース候補の挑戦

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する第7回女子野球ワールドカップが、9月3日から韓国・釜山近郊で行われ、日本は大会5連覇を目指している。高知、新潟、沖縄と続いた強化合宿を経て、侍ジャパン女子(通称・マドンナジャパン)の代表選手20人が確定した。初選出は6人。世界デビュー、そしてジャパンをけん引するような成長が期待されるフレッシュな顔ぶれを中心に紹介し、女子野球の魅力や現状に迫る。

 愛くるしい笑顔が、マウンドでは一変する。田中露朝(20)=尚美学園大=が代表に初選出された。将来のジャパンのエース候補として期待のかかる田中にとって、今回のW杯は大きく成長するための、最高の舞台となるはずだ。

 2年前の2014年。福知山成美高の3年生だった田中は、スリークオーター気味のフォームから繰り出すキレのある直球と、ほぼ同様の腕の振りから投じるスライダーを武器に、第6回W杯(宮崎)の代表候補となった。

 しかし最終選考で、落選。「悔しさはありました。力のすべてを出し切れなかった」と振り返った。一方、代表候補として数度の強化合宿を経験する中で「自分の、これから取り組むべき課題を知ることもできました」と、ただ悔しいだけで終わらなかったことが、今回の選出に結びついた。

 日本には、絶対的エースがいる。女子プロ野球兵庫ディオーネに在籍する、里綾実(26)だ。前回のW杯では3試合、11イニングを投げ無失点。米国との決勝戦完封などが評価されMVPに輝いた。

 その里は、大学卒業後の一時期、福知山成美高女子硬式野球部のコーチを務めていた。「その時から教えてもらっていたんです」と田中。それが4年前。

 そして2年たって、指導者と教え子は、選手同士として代表候補合宿に参加し、田中は最終的に落選、里は4連覇の立役者となる。「里さんはハイレベルなエースで、私もああいうふうになりたい」と、高校時代に教わったこと、前回の合宿でのやりとりや、投手・里の姿を改めて胸に刻んだ。

 15年、田中は元西武・新谷博監督率いる尚美学園大に進学し「自分のやれることを日々やらないとレベルアップできません」と、取り組むべき課題克服に、真正面から向き合った。

 侍ジャパン女子代表・大倉孝一監督(53)は、投手力主体のディフェンスからチームを作る。「世界大会で、ピッチャーの調子が悪くて試合が壊れた、は許されない」と、たとえ本調子でなくても一定の投球ができるレベルが要求される。その技術を持つ、と認められたのだ。

 加えて、2年前は緊張もあり、力を出し切れなかった合宿で、今は「全力を見てもらえてます」というハートの強さも備わった。20歳。「少しだけ、大人になったのかもしれません」と笑う。

 大学生となって、行動範囲、交友範囲が広まった。手にする自由も増えたが、そこに責任が伴うことも自覚する。「高め合っていける友人たちの存在も大きいですね」と、確かに以前よりお姉さんの顔になった。

 父、兄の影響で小学校1年から野球を始めた。そして当時は数少なかった女子硬式野球部のある環境を求めて、奈良県から京都の福知山成美高に進学。昨年から、さらに実家から離れた埼玉だ。なかなか家族と会えない寂しさと引き換えに、好きな野球を続けている自分がいる。

 「里さんのような、大きいピッチャーになりたい。世界で活躍して、お母さんに喜んでもらいたい」という夢への挑戦権を、田中は手にした。

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