異色の指揮官 パン職人が高校野球監督として昨夏のリベンジ
「高校野球京都大会・4回戦、立命館宇治3-0鳥羽」(20日・わかさスタジアム京都)
昨夏の京都大会決勝の再戦で、立命館宇治が鳥羽にリベンジを果たした。指揮官としてベンチに座ったのは昨年まで同校のコーチを務めていた里井祥吾監督(33)。教員ではなく、パン職人の傍らで高校野球指導者を務めている。
「きょうは(エースの)田中に尽きます。選手たちがよく頑張ってくれました」と優しい笑みを浮かべた里井監督。昨夏決勝の再戦にも「選手たちには去年は去年、今年は今年だからと伝えました。普段通りに」と語り、自身も「普段と違うことをやるのはイヤだったので」と早朝から両親と一緒にパンを焼いて試合に臨んだ。
家業として営むパン職人。立命大を卒業後、鳥羽時代の恩師だった卯瀧前監督に誘われた。06年から立命館宇治でコーチとして指揮官を支え、昨年のセンバツなど2度の甲子園出場に貢献。昨夏の京都大会後、定年で勇退した卯瀧監督の後を受け監督に就任した。
早朝からの仕事、そして夕方からは高校生の指導と多忙な日々を送るが「今は監督業の方に重きを置いています。パンを焼くのは息抜きですね」と笑う。
就任後、保護者の協力を得て体づくりを選手に課した。練習前に近所の牛丼店でご飯を用意してもらい、選手に食べさせてから練習に臨んだ。エースの田中はオフに体重が10キロ近くアップ。土台がしっかりしたことで制球が安定し、ボールの勢いも増した。
チーム作りはディフェンスが基本。「やっぱり守りを中心に。その中でオフはバットの振り込みであったり、走り込みであったり。体力面の強化も含めてですね」と徹底的な練習で鍛え上げてきた。この日も堅実な守備でエースをもり立て、同点の六回2死一、二塁の場面では、左翼ポール際へ飛んだ飛球を樋浦がスーパーキャッチを見せた。
「試合の中でも選手に任せるところは任せて」と普段着野球で、選手をノビノビとプレーさせる里井監督。エースの田中は指揮官について「忙しいとは思うんですが、いつも広い目で自分たちを見てくれている。すごくいい監督さんだと思います」と明かす。
昨秋、今春と県大会では結果が出なかったが、その悔しさを糧にチームが一丸となり、昨夏の代表校を破っての8強進出。「鳥羽は僕の母校でもあったので」と2000年の第72回センバツで2年生ながら鳥羽の3番として、4強進出の原動力となった実績を持つ。
「何とか生徒を甲子園に連れて行きたい」と力を込めた指揮官。生徒に愛情をそそぎ、手塩にかけて作り上げたチームは、まだまだ上に行く可能性を秘めている。