玉野光南、天国から地獄 甲子園決めたと思ったが…判定覆り逆転負け
「高校野球岡山大会・決勝、創志学園4-1玉野光南」(25日、倉敷マスカットスタジアム)
3年ぶり4度目の甲子園出場を目指した玉野光南が逆転負けで聖地を逃した。いったんは投ゴロ併殺打で“試合終了”、歓喜の輪がマウンドにできたが、5分後に自打球としてファウルに判定が覆る事態に。その後、5本の集中打で試合をひっくり返され、山河毅岡山大会審判委員長(55)は「不手際があった」と語った。創志学園はドラフト上位候補の高田萌生投手(3年)が気迫の投球で、夏は初めての甲子園出場を決めた。
あまりにも残酷すぎる結末だった。マウンドで歓喜の輪を作り、喜びを爆発させたナインは30分後、絶望の淵へたたき落とされた。終わっていたはずのゲームでまさかの逆転負け-。両校ナインが涙を流す異様な光景は、審判団の“ミスジャッジ”から始まった。
1-0で迎えた九回1死一塁。創志学園・難波侑平外野手(2年)の投ゴロを1-6-3と転送し、“ゲームセット”を迎えた。笑顔でホーム付近に整列するナイン。その横で一塁へ走らなかった難波は、打球が左足に当たったと球審に主張した。しかし抗議は受け入れられず、審判員はホーム後方に整列。それでも創志学園ナインがベンチへ戻ると、審判団は再協議を始めた。
整列して待つ玉野光南ナイン。浜口祐真投手(3年)は「ゲッツーで終わってくれ」と心から願った。スタンドからは校歌が響き、手拍子も沸き起こった。協議時間は約5分。「自打球と判定し、試合を再開します」のアナウンスが場内に響くと、怒号と歓声が入り交じった。
田野昌平監督(44)は「強い気持ちを持って入れ」とナインを鼓舞。しかし、一度切れた気持ちは戻らなかった。5本の安打を浴びて一挙4点を失うと、反撃の力はもう残っていなかった。
山河審判委員長は「不手際があったと思います」と認めた。本来ならすぐに協議し、選手たちに分かるようジェスチャーで示すべきだった。整列してからの協議だけに「ああいう時の対応を考えないといけない」と再発を防ぐために今後、対策を練る方針だ。
試合後、田野監督は判定に異を唱えず、「甲子園は行けなかったけど、生徒には人生の勝利者になってほしい。よく頑張った」と目を潤ませた。主将の今村仁哉内野手(3年)は「後悔しないと言えばウソになるけど、もう終わったこと。創志学園に頑張ってほしい」と言った。
もう、あの瞬間には戻れない。それでも素直に勝負を受け入れた玉野光南ナインの潔さ-。誰からも称えられる姿勢を、敗者は最後まで貫いた。