京都翔英・石原 完全燃焼した後は母の手料理が待つ場所へ…
「全国高校野球・1回戦、樟南9-1京都翔英」(10日、甲子園球場)
こんなはずじゃなかった。もっともっと、聖地を沸かせられるはずだった。大差での敗戦に「京都を代表して来て、大差で負けてしまって…」。京都翔英・石原彪捕手(3年)の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。女手一つで育ててくれた母・絹枝さんに、恩返しの1勝を贈れなかった。
「プロ野球選手になって、お母さんを楽させてあげたいです」-。小学2年の時、野球を始めることに反対された。それでも中学生になると、母が一番のファンになってくれた。洗濯物を出し忘れ厳しい言葉を投げかけられても、翌朝にはきちんと洗われたユニホームが置いてあった。
「弁当を用意してもらって、夕飯も同じように用意してもらって。自分がケガして試合に出られない時でも『あの子が見たいんや』と言って見に来てました」。いつしか母は息子だけでなく京都翔英の大ファンになっていた。だからこそ、勝って喜んでほしかった。胸を張って校歌を歌ってほしかった。
「本当にうるさくて、元気なお母さんです…」。そう言うと、涙とおえつで愛くるしいドカベンの顔はクシャクシャになった。大好物は母の手料理で「何でもいい。おなかいっぱいになりたいです」-。聖地で完全燃焼を果たした野球少年は腹をすかせ、最愛の母が待つ場所へ帰る。