境・永田、右肩脱臼から復帰…支えてくれた人へ“感謝の土”を
「全国高校野球・2回戦、明徳義塾7-2境」(13日、甲子園球場)
本当はユニホームを真っ黒に汚したかった。3点を追う八回。代打で打席に立った境(鳥取)・永田竜海内野手(3年)は三ゴロに倒れた。内野ゴロで一塁にヘッドスライディングする球児が大半の中、そうはしなかった。「最高でした」と振り返る聖地でのプレーで、唯一の“不自由”。そこには理由があった。
最初の“悲劇”は入学2週間後。けん制で帰塁した際に右肩を脱臼した。その年の9月には体育の授業でのバレーボール中、スパイクを放った際に再脱臼。12月に手術を受けた。練習補助員として仲間のサポートを続け、再びボールを投げられるようになったのは今年4月だった。
復帰までの間「何度も野球を辞めようと思った」と振り返る。それでも仲間は「待ってるからな」と声をかけ続けてくれた。永田の心境を察した坂口健一監督(46)は本人に内緒で、両親に「絶対に辞めさせないで下さい」と懇願していた。周囲の思いが、折れかけた心をつなぎ止めた。
肩への影響からヘッドスライディングができない中での出場だったが、試合後の永田の腕は真っ黒に汚れていた。今までの感謝を込め、たっぷりとすくった聖地の土。「じいちゃん、ばあちゃん、両親、アルプスの仲間…。色んな人にあげたい」。涙が乾いたその表情には、達成感も宿っていた。