阪神・青柳の転機となった金本監督の言葉 「どっちをやりたい?」
横手投げと下手投げの中間から繰り出される最速147キロのストレート。阪神のドラフト5位・青柳晃洋投手(22)=帝京大=は、ここまで4勝と1軍の舞台で奮闘している。金本監督の一言が、右腕の転機となった。
6月1日・楽天戦(コボスタ宮城)でのプロ初登板初先発初勝利から全てが始まった。当初先発が予定されていた横山が、左肩痛のため登録抹消。代役を任され、5回3安打1失点の力投で見事チームの窮地を救った。「いきなりでしたし、もうフラフラだったんですけどね(笑)」。初勝利の余韻に浸るルーキー右腕に、金本監督が声をかけてきた。
「お前は先発と中継ぎ、どっちをやりたいと思っているんだ?」
帝京大4年の首都大学野球秋季リーグ戦では、先発としてリーグ最多の6勝をマーク。春先のウエスタン・リーグでも先発を務めていたが、首脳陣の意向で4月中旬から中継ぎに転向していた。そんな中での突然の1軍戦で、さらに先発起用。だが、指揮官への返答に迷いはなかった。
「僕は、中継ぎの方が向いていると思います。でも、先発をやっていきたいです」
7月7日・巨人戦(東京ドーム)は、7回1安打無失点とG打線を完璧に封じ込めて2勝目。12年の藤浪以来、球団4人目となる巨人戦初登板初勝利の快挙を成し遂げた。その後も白星を積み上げ、ここまで9試合で4勝2敗、防御率3・77(8月17日現在)。先発ローテ陣の一角として、チームに新たな風を吹かせている。
「僕の高校(川崎工科)は弱かったので、甲子園は現実的ではなかったんです。正直、僕は『甲子園を目指すぞ!』という感じではなかったような気がします。でも、プロ野球選手にはなりたかった。それは、大学に入ってもずっと変わらず思い続けていましたね」
初勝利を挙げた仙台の夜から、サクセスストーリーが始まった。「チャンスをくださり、監督やコーチのみなさんには感謝しています」。金本監督に先発への強い思いを伝え、それが自らを奮い立たせるきっかけになった。「試合前はね、まだすごい緊張するんです(笑)」。幼い頃からずっと憧れていたプロ野球の世界。今は、迷わず前進あるのみだ。(デイリースポーツ・中野雄太)