山下智茂氏、作新学院・小針崇宏監督対談【4】勝ったことで本当の挑戦者になれる

 デイリースポーツ評論家の山下智茂氏(71)=星稜総監督=に作新学院の小針崇宏監督(33)が明かした「勝って、本当の挑戦者に」の思い。そこには、夏の甲子園を54年ぶりに制して名門を再建した安堵(あんど)より、変化し続ける覚悟があった。【1】~【5】でお届けする。

  ◇  ◇

 山下智茂氏(以下、山下)「夏は草むしりとかどぶ掃除とかをしながらチームをつくっていく。あいつは投手向きだな、あいつは外野手、あいつは内野手向きだと。今井とか一人で何でも黙々とできるでしょう。部屋はきれいじゃない?投手はきれいじゃないと大成しないね」

 小針崇宏監督(以下、小針)「結構、繊細ですね」

 山下「(草むしりやどぶ掃除を)内野手は固まってする。外野はぽつん、ぽつんとする。作業をしながらそういうところを見つけていく」

 -控え選手にも役割を与えるというが、代走や伝令の適性はどう見極める。

 小針「うちは6月に最後の強化合宿をやるんです。そこで初めて一緒に寝泊まりをする選手もいる。どういう食べ方するとか、こいつは朝が早いとか、夜遅くまでバット振っているとか。水曜から日曜までで通常4週間、今年は6週間やらせてもらいました。その中で野球以外の部分、性格とかも見えてくる。そこで、これをしっかり頼むぞと役割を与える。3年生は考え方も大人になってくるので、こっちが期待している言葉とかそぶりを意気に感じてくれる。そこは大事にしています」

 -一緒に寝泊まりをすると違う?

 山下「ご飯の食べ方とか、あいさつの仕方とかね。自信がついてくると大きな声を出す。1年生とかに(声が小さいと)コラッって。絶対うまくならんぞと。いくら野球がうまくてもダメ。グラウンドで出るね」

 小針「勝負になればなるほど、一瞬に(性格的なものが)出る競技なのかなと思います」

 -春夏連覇の名門を引き継ぎ、OBの期待、世間の目に悩んだことは?

 小針「よく言われますが、自分は感じたことがないんです。20代そこそこの若手なので、応援しようとか、支えていこうというOBの方が多かった。何か変われるチャンスだから、OBも選手を応援していこうとOB会長の方々も言ってくれた。支援していただける方々のおかげで合宿もできる。選手が集中できる環境をつくってもらっています」

 -6年連続で夏の県大会で優勝し、全国制覇へとステップアップした。

 小針「そういう意識はすごく持っています。そのために自身も変わっていかないといけないと思う。同じことを続けるのも大事だけど、選手が変わる中で変わっていくこともある。方法を見つけながらですね」

 山下「日本一になって王座を守るのも大変だけど、それ以上に至難の業だね。でも、若いからやりがいがある」

 小針「1回勝ったことによって、もう1回本当の挑戦者になれるのかもしれません。本当の挑戦です。新しい目標、新しいことへのチャレンジが1年1年続いていく。練習メニューも気持ちもいろいろ変えていけているのかなと感じます」

 -今年はどんなチーム。

 小針「今年の3年生に似てますが、センターラインをもう少ししっかりさせていかないと。ただ、今までの流れの中で先輩の姿を見て、今年の選手はやろうという気持ちは一番感じられる。実力は別にして、やろうという姿勢は感じます」

 山下「高校野球はそれが一番大事」

 小針「今までは選手のやる気を引き出すことにずっと精進してきたんです。でも、今は少しずつそれを選手の方から出してもらっている。それを自分がどうするかですね」

 -アップ中にサーキットトレーニングを入れている。基礎トレーニングは通年やる?

 小針「メニューは違うけど冬だけではなく通年で入れるようにしています。(練習時間の短い)平日は、アップをやっている間に時間が過ぎてしまうので、アップをやりながらサーキットトレーニングなどを入れ、鍛えながらやります。鍛えながら技術練習も入れる」

 山下「日没が早いから、ノックや打撃練習でトレーニングがおろそかになるよね」

 -全国制覇した後の新チームには改めて話をした?

 小針「最初にしました。自分たちらしい今年のチームづくりのスタートだと。日本一を背負うより、もう一度目指すという方向に行かなくちゃと。(全国制覇という)いいものをスタンドで見ていたので、その思いや感動だけは忘れないようにして、今度は自分たちがやる番だと話はしました」

 山下「甲子園でベンチをずっと見ているけど、采配は厳しいよね。今の若手監督で、あれだけ選手を動かす術を持っている人はあまりいない」

 小針「自分ではわからないですけど」

 山下「雰囲気がすごくいいよね。なんか武士みたいな感じ。その中に優しさもあるんだけど(意思が)強いな。大会中も調整練習はないの?聞いた話だと、今井君なんて毎日シート(打撃に登板)していたって。甲子園への調整じゃなく上の上の上を目指す練習だと聞いた。智弁和歌山の高嶋監督がそうだった。日本一になるまでは厳しく厳しく。(2時間ごとのグラウンドの割当で)僕らの先に練習をして、僕らが終わってもまだ周囲を走っている。夏の暑さの中で打撃やノックを2時間練習して、まだ2時間走らせるんだからね。小針さんを見て高嶋監督を思い出したよ」(5に続く)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

野球最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(野球)

    話題の写真ランキング

    写真

    デイリーおすすめアイテム

    リアルタイムランキング

    注目トピックス