DeNAから戦力外通告を受けた右腕がノーヒットノーラン JR西日本・加賀美
「社会人野球日本選手権・2回戦、JR西日本5-0JR東日本東北」(5日、京セラドーム大阪)
JR西日本の加賀美希昇投手(28)が、日本選手権史上2人目となる無安打無得点試合を達成した。昨季限りでDeNAから戦力外通告を受け、社会人野球に新天地を求めた右腕が快挙を成し遂げた。
九回裏、マウンドへ向かう加賀美を大声援が後押した。アウトを重ねるたびに高まっていく緊張感。最後の打者を中飛に打ち取ると、ガッツポーズを繰り出した加賀美のもとへチームメートが駆け寄ってきた。許した走者は死球と味方の失策による2人だけ。「人生で初めてです。ずっとノーヒットだなと思っていた。九回は意識してました」と右腕は声を弾ませる。
昨オフ、DeNAから戦力外通告を受けた。合同トライアウトを受験する中、JR西日本から「テストを受けてみないか」と連絡が入った。社会人野球でプレーすることを決断し、社業と野球の両立を始めた。午前9時から広島駅前の会社で経理の仕事をし、昼から練習する生活。だが夏までは結果が出なかった。
加賀美の魅力とされていたのは「球速にこだわりがあった」と語る最速153キロの直球。だが力んで制球が甘くなったところをことごとく痛打された。一発勝負のトーナメントが主流の社会人野球-。考え方を変えた。
「緩急とコントロールでゲームをつくる。追い込んでからも、三振を狙いにいくのではなく、内野ゴロ、外野フライと強く振らせなければいいと思った」。投球スタイルを変え、自然と結果がついてくるようになった。
この日も直球の最速は144キロ。それでも100キロ台のチェンジアップとカーブを有効に使い、相手打者をほんろうした。奪った三振は5つ。凡打の山を積み重ねた加賀美のスタイルは、自分の殻を破った象徴だ。
「(元プロの)プライドはゼロではないですけど、変な上から目線とかはない。チームが勝つことが大事。それは他の投手と同じです」と笑った加賀美。「プロの1勝もすごく大変なものだと感じましたけど、気持ちのぶつかる社会人野球で勝てたことはすごく光栄です」とその表情には確かな達成感がにじんでいた。