山下智茂氏×履正社・岡田龍生監督対談【4】実戦練習で養う『野球頭脳』

 星稜総監督の山下智茂氏(71)に、明治神宮大会で初優勝した履正社の岡田龍生監督(55)が、選手育成やチームづくりの理念を語った。「ロボットのように操縦されては何も考えられなくなる」と主体性を養う指導は、ヤクルト・山田、オリックス・T-岡田ら強打者を生んだ。山下氏も「出会いが打者を育てる」と自らの経験を振り返った。

  ◇  ◇

 -いい選手が入ってくるようになったのは。

 岡田龍生監督(以下、岡田)「僕がここへ来て3、4年目に上宮に勝ったということで少し名前が出た。でも、履正社ってどこの学校やって感じでした。監督10年目の97年、(エース)小川で初めて(甲子園に)出ました。その頃は中学の硬式チームにはほとんど相手にしてもらえなかった。ボーイズとかからは選手を送ってもらえず、軟式の先生方にすごくお世話になりました」

 山下智茂氏(以下、山下)「うちらの時は(中学は)軟式しかなかったからね。でも、軟式の子は伸び率が高い。硬式の子は即戦力で6月頃にはレギュラーになるけど、7月くらいになるとケガをすることが多いね。土日しか練習していないから」

 岡田「体力的には違いますね」

 -何から手をつけた。

 岡田「若かったんで、卓球をやっていた子に何で守られへんねん、打たれへんねんと言ったり、目標はバックホームで本塁に届くことだと言っていた子がエラーしたら怒ったり。今はかわいそうなことをしたなって思います」

 -多くの強豪校と違い、寮がないが。

 岡田「通いなので自宅で食事面の意識づけができます。親子での栄養講習をゴールデンウイークに毎年開催し、食事内容をチェックしてカウンセリングも受ける。通いだからできることを有効に使おうと考えています」

 山下「練習を見て思うのは、型にはめていないということ。選手はノビノビとやっている。ライバルの大阪桐蔭は、きっちり型にはまっている。そこが違うかな」

 岡田「(主体性を重視したのは)ある時からですね、僕は中学までバレーボールをしていて、高校で野球をしようと東洋大姫路へ行きました。当時はバレーボールも野球もスパルタでやれば強くなると思われた時代。(中、高)6年間で洗脳されていた。でも、当時の東洋大姫路からプロで活躍したのは弓岡(敬二郎)さん(オリックス2軍育成統括コーチ)、宮本(賢治)さん(ヤクルト2軍監督)くらい。弓岡さんはあの時代に自分でも早く練習に出ていって、壁当てをしていたと聞いた。驚きました。何も考えずにロボットのように操縦されていたら、上に行った時に自分で考えるということができない。僕自身も大学に行った時に、どうしたらいいんやろうっていうのがあった。公立から来た子などは自分で練習していたのに。そういう部分からでもあります」

 山下「バレーをやっていたのに、なぜ野球の名門、東洋大姫路で野球をやるようになったの?」

 岡田「当時の先生が、私の身長から『お前はアタッカーにはなれない。ピンチレシーバーかピンチサーバーだから野球をしろ』と言って。小学校の時は野球をしていましたので。あと5センチ身長が高かったらバレーボールをしていただろうと(笑)。一般入試で入りました」

 山下「あの厳しい梅谷さん(東洋大姫路元監督・梅谷馨氏)のところで頑張ったね」

 岡田「僕は大阪なのでどういう学校かあまり知らなかったんです。軟式のいい選手ばかりでしたが、兵庫県外から来る子はほとんどいなかった。同級生は大阪から来るなんてすごいやつだと思ったら、バレーボールをやっていたと(笑)。(野球以外のスポーツの出身者は)僕一人でした」

 山下「そりゃそうだろうね」

 岡田「僕に野球を勧めてくれた先生ももともと空手で、バレーボールで全国大会に行って五輪選手も出した人でした。空手で正拳突きのグーが一番力入っていると思って『何でバレーはパーで打ってるねん』とむちゃくちゃ教えていたらしい(笑)」

 -指導していて、伸びない選手はどういうタイプが多いのか。

 岡田「山下先生が言われるように気持ちでしょう。僕らは足が速いとか肩が強いというのが素質やと思っているけど、毎日コツコツとできるというのも素質、素材やと言われたことがあります。最後はそうやって自分でできる子ですね。僕らもそうだったけど、やらされているやつはどこかで絶対にサボっている。自分でやる人間は、人が見てようが見てなかろうが関係なくやります」

 -自分で考えさせる機会は?

 岡田「実戦練習は絶対に毎日します。紅白戦やシート打撃で、このケースでは自分が何をするのか、ここで点が取れるのかと考えて打つようにします。無死一塁でここへ打球が来たらとノッカーが打ってイメージ力を磨く。この辺りだったら一塁走者はどこまで行っただろう?本塁へ帰って来れたか来れないか?と、想定の中で練習する。実戦に即した練習が多いですね」

 山下「例えば8番打者がカウント0-3から打ったり、無死一塁から打てというサインが出ているのに引っ張ったりということがある。日本一になるチームは練習で実戦的にできるかどうか。小さい8番打者が、ガンと打って併殺とかあるから」

 岡田「うちは併殺が少ないですね」

 山下「それは日頃の練習からだよね」(5に続く)

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