緒方監督×安仁屋OB会長が本音対談

 2年目の指揮を執る広島・緒方孝市監督(47)を迎え、キャンプで臨時コーチを務めることが決まっているデイリースポーツ評論家でOB会長の安仁屋宗八氏(71)が鋭く迫る毎年恒例の新春監督対談。昨季3年ぶりBクラスに終わった反省と、今季に懸ける悲壮な覚悟、日本一へ自信を明かした。“新生”緒方カープのキーマン、エース前田の穴を埋める存在とは。両者が熱い言葉で語り合った。

  ◇  ◇

 安仁屋「明けましておめでとう。昨年はご苦労さんでした」

 緒方監督「おめでとうございます。本当にお疲れさまでしたという言葉より、すみませんでした…という言葉ですね」

 安仁屋「最後はいいところまでは、行ったんだけどね」

 緒方監督「勝負できるなというところまで、なんとか盛り返して。最後の最後ほんとにムチ打って、突っ走らなければいけないところで失速してしまって、本当に申し訳なかったなと思います」

 安仁屋「それとね、3月、4月。あの借金がね。9勝16敗」

 緒方監督「今、思えば、本当に痛かったですね。あの、開幕広島3戦を2勝1敗でいって。本当にヨシッ、これで乗っていけるかなっていう直後の7連敗。不安視していた中継ぎ、抑えっていうところで、完全に形が決まらなかった。なおかつ、開幕してから得点力不足で。新井もケガで全然、出られなかったですし」

 (続けて)

 「まして、4番を予定していたエルドレッドが、ケガで戦列を離れた中でのスタートだった。得点力不足と、最後の七、八、九回を抑えて守りきるという野球ができなかった。7連敗以降、野球は守りだと思うので、しっかり投手陣を含めた守り、中継ぎ、抑えのところでしたね。これからの戦いの中で考えて、組み替えていかなくては」

 安仁屋「一番の原因は、一岡、中田あの2人がね。中継ぎで投げなかったし、ヒースもイマイチだった。途中から大瀬良を回したよね。僕は、最初から言ったように、大瀬良を中に入れることを反対したはずなんだけど。やっぱり投手は性格を見てやらんと。向き、不向きいうのがあるから、僕は反対したんだよ」

 緒方監督「僕も、最後の最後まで決断するのにかなりかかりました。4月の中旬過ぎから、6連戦がずっと続いていく形になる。前半というのは先発投手を6人、そろえなくてはいけない。最初のうちから詰めて投げさせたら、中盤以降にバテが来るので。だけど、中継ぎ陣が安定していなかった。大地(大瀬良)が抜けたら6人そろわなかったんで、本当悩んでの決断でしたね」

 安仁屋「野村がね、もうちょっとやってくれるかと思ったけど。ちょっとつまずいてしまったからね」

 緒方監督「いい勝ち方をした中で、交流戦から勝てなくなってしまった。本当にそこが、大地だけでなくて、祐輔(野村)と2人抜けてしまったのは、ものすごい痛かったです」

 安仁屋「やっぱり、野球は守り中心。一番カープが強い時にはそうやってね」

 緒方監督「本当にそうです。僕が入団してから、カープは投手王国時代。年齢的には少し下がった時期だったんですけど、とにかく、まず点を取られなかったんで、カープ投手陣というのは」

 安仁屋「特に先発投手というのはね」

 緒方監督「なんとか打てなくても少ない点数で守りきって勝ちきるっていう野球をずっとしてきたんで、実際その野球というのが自分の理想というのがあったし、そういう野球をするんだという思いでいたんですけど。最初に名前を挙げられた中田、一岡、そして今村が一番大事なところで、やってはいけない先頭打者を出してしまう。それもフォアボールとかで出してしまう。そういうミスっていうのは、点につながる確率がものすごい高くなる」

 緒方監督「実際にそうやって1点を与えた中で、負けてしまったというのが数多くあるんです。投手というのは、打たれたくないという気持ちが先に来るのか、それとも抑えたいという気持ちが強すぎてストライクがなかなか入らないのか。彼らの気持ちを心の中まで読み取るまでは、時間がかかったんですけど。彼らがはまってくれなかったのが、ちょっと誤算でしたね」

 安仁屋「僕らもそう思った。一昨年、中継ぎがあれだけやってくれたから、昨年もやってくれるだろうと、頭で決めとるからね。期待をあの3人が裏切ったという形になるけれど、もう一つ足りなかったのは左の中継ぎだよね」

 緒方監督「本当そうですね。左投手で言えば頭数がいないですけど、戸田というのもものすごい期待していました。あとは飯田ですね。安仁屋会長にもキャンプから、この子はすごくいいっていうことも言ってもらえましたし。キレのあるいい直球とチェンジアップを放るんで。楽しみだな、使えるなっていう思いでスタートしたんですけど。これも結果というのが付いてこなくて、そこも誤算でした。左対左で平気で四球を出すんです」

 安仁屋「それで、左にものすごく打たれとるやろ」

 緒方監督「逆に、右打者の方が抑えてるぐらいですから」

 安仁屋「本当に走り込み、投げ込みいうのをね。キャンプで壊れてもいいんじゃないかというくらいで。シーズンに間に合えばいいぐらいに投げ込みをさせないと、フォームの安定感がない。マウンドに行ったらフラついているから」

 緒方監督「そういう投手というのは、どうしても力の入る場面が出てくる。抑えたいという気持ちと同様に、体も力んでしまいますよね。力んで無駄な力が入ると安仁屋さんが言われたように、フォームがバラバラで力のある球がコンスタントに放れない」

 安仁屋「制球力もつかないしな。やっぱり投げ込んで、下半身強化が必要かなと」

 緒方監督「今の子は、投げ込む練習法はしないですね」

 安仁屋「僕は、マエケン、黒田なんか聞いたらいいと思うよ。やっぱり若い頃は投げ込み。自分で下半身、フォームの安定感いうのをつくってから、やってきた選手だから。そういうのも僕は、注入して欲しいなと思っている。いる間に。若い選手が見てついていけるかいうのが、一番大事になってくる」

 緒方監督「打者同様に、投手も練習の1球であろうとしっかり気持ちを込めた、真剣な練習をしないと身につかないと思います」

 安仁屋「キャンプは一番、大事な時だから。厳しい練習というのも身につけさせてね。けがする選手は、大事にしてもけがする。そういうふうになっとる。けがを怖がったら、教えられんと思っとるから。思い切りやったけがは治りも早いし、特に投手は肩に負担が掛かる掛かると周りは言うけど、そんな問題ではない。じゃあ僕らは何だったんか。500球投げさせられたよ」

 緒方監督「1日にですか?」

 安仁屋「そうよ。本当だから。最後の方はホームに球が届かん。そしたら根本(陸夫)さんが言うんよ。『自分のフォームで投げてみろ。ストライクとれるから』ってね。ずっとやってきた。それでいて18年間、1回も肩を痛めたり、マッサージもしてもらったことはない。僕らの時は食い物もない時代。今、食い物もぜいたくな時代じゃ。今の子の方が、色んな意味で強いはずなんだから。今シーズン星勘定したら、100勝近くする」

 緒方監督「いかないですよ(笑)。どうやったら100勝までいくんですか」

 安仁屋「マエケンがいなくなったけど、計算していったらね。黒田は15勝しなくてもいいと思う。7、8勝でいい。彼はね」

 緒方監督「10勝にしときましょうよ」

 安仁屋「2桁やってくれればね。やっぱり今度は大瀬良なんよ。ジョンソンはほっといても17、18は勝つ。バックが打ってくれさえすれば。これは17。黒田が勝った分、これに足して2人でね。ここからが問題なんよ、大瀬良、福井、野村で、あと今度入る新人がいる。岡田、横山は即戦力で獲っとるやろ」

 緒方監督「もしかすると、その先発枠に、戸田とかも」

 安仁屋「あの子は先発がいいと思う。中継ぎが向かんような気がする。彼は先発させてみて、オープン戦で使ってみたいと思ってね。一番結果を出すと思う。あと中村恭。彼も球はものすごくいいものを持っている。実戦で経験させたら、勝てると思う」

 緒方監督「本当にそう思います」

 安仁屋「あとは、マエケンの代わりになるのは福井」

 緒方監督「福井ですね。昨年9勝だったんで、絶対2桁は」

 安仁屋「最低2桁勝たんと。また、やってもらわんとイカンね。精神的に弱いだけで乗ったら強いと思う。だから彼は12、13勝は勝ってもらわんと。大瀬良に15は勝ってもらわんと、マエケンの穴埋めできんからね。やっぱりそういうふうに計算していったら、問題は野村になるよね」

 緒方監督「祐輔(野村)ですよね、本当に」

 安仁屋「彼はキレで勝負するタイプやから、ちょっと制球が甘くなったら打たれる。僕は、2桁勝つ力はあると思う」

 緒方監督「去年はいい時期は、本当にいい投球をした」

 安仁屋「すばらしかった。巨人戦がそうだったろ」

 緒方監督「ただ、言われるように、球のキレが少し落ちてきたなっていうと、長いイニングを投げられないですもんね。四回もしくは長くても五回までに、絶対つかまるようなピッチングになる。あと、祐輔に勝ってもらうためには、スタミナとキレですよね。そこをいかに今季の課題として、彼ができるかというところです」

 安仁屋「去年みたいなことはない。今年は楽しみが多い年だと思う」

 緒方監督「11月は本当に厳しいキャンプだった。でも厳しさの中にも楽しさがちゃんとあった。選手も厳しいばかりでは最後まで、なかなかやり抜けない。楽しいばかりのキャンプでもなかったし。ちゃんと厳しい練習の中でやってたんで、ある意味本当に、シーズンを戦う上で、コーチングスタッフも変わりますし、選手と一丸となってね。いい戦いができるんじゃないかと思ってます」

 安仁屋「セ・リーグの監督が一気に若返る。意識はある?」

 緒方監督「全然、意識はないですよ。逆に監督が代わったから、相手チームがどういう今までと違った野球をするんだろう、考えてるんだろうと考えたら、戦えないです。相手がどこであれ、自分らの野球をすることを念頭において。逆にこっちが思い切った野球をやって、相手が考えてくれればありがたいですよね」

 安仁屋「相手の監督がどうこうじゃないよね」

 緒方監督「ただ、人気球団、阪神にしかり、巨人にしかり、DeNAもものすごい昨年観客数が増えて。人気もどんどんある球団の監督が代わるんでね、またファンも増えると思います。相手球団の応援に押されないように。こっちがしっかり押し返して、戦いたいと思います」

 安仁屋「やっぱり今年は、優勝目指してやってほしいね」

 緒方監督「昨年はファンをがっかりさせてしまったシーズンでしたので。今シーズンこそリーグ優勝をですよね。優勝目指して戦った中で、日本一に向けて最後の最後まで野球をしたい。昨年の秋季キャンプは、本当に長かったですから」

 安仁屋「いろいろツラいことも多かったからね」

 緒方監督「かなり長い秋季キャンプで、選手もクライマックスにも出れないと、こういうキャンプになると身に染みたと思う。そういうもの悔しさ、バネにして、シーズンを戦おうと思います」

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