新井12年連続の護摩行!100分耐え抜いた
広島・新井貴浩内野手(38)が12日、鹿児島市の烏帽子山最福寺で、12年連続12度目の護摩行に挑んだ。高野山別格本山「清浄心院」の住職・池口恵観大僧正(79)は「全身奉炎(ぜんしんほうえん)」の言葉を伝授。本塁打王を獲得した2005年を例に「あの時のような気が出ている」と活躍を断言した。プロ18年目のベテランが身を粉にして戦う。
高さ3メートルの炎が揺れる。火の粉が舞う。気絶しそうな心を、叫ぶことで必死に保った。12年連続12度目の荒行、苦行。護摩壇の最前列で座禅を組んだ。お経を唱(とな)えて100分。初日の行を終えた新井の顔は、真っ赤にただれ、膨れた。
「何度経験しても変わらない。しんどいし、怖い、痛い、苦しい」。火柱のすぐそばで、新井は熱風、白煙と相対した。前は炎、後ろは壁。逃げ道はない。ただ無心になって「何も考えられない状態」の中、般若心経を唱え、炎と向き合った。
護摩木の数は昨年と同様の2000本。だが、池口氏は「火の力を中心においた」と説明。摂氏400度を超えるといわれる炎に、例年以上の気を込めた。「昨年よりも今年はいいですね」。力強く炎をはね返す姿に、同氏は活躍を断言する。
「ものすごくいい気が出ています。2000安打?それは早い時期に達成できるでしょう。それよりも、本塁打王を獲得した時のような気が出ています」
新井は04年のシーズンオフ、初めて最福寺の門をたたいた。当時を知る同氏は、本塁打王を獲得した05年に「近い気が出ている」と期待する。授けた四字は「全身奉炎(ぜんしんほうえん)」。文字通りに「全身で炎になってぶつかっていく。火の玉になればできる」と心構えを説いた。
30日に39歳になる。レギュラー奪取に燃えた12年前と心境は違う。18年目。目指すのは25年ぶり優勝と、チームの強化。残り29本の2000安打は、勝利につながる一打で重ねる。「自分では通過点。節目の安打は勝ちにつながるものに」。古巣復帰した昨年同様、初心に帰ってひたむきに、ひたすらに白球と向き合う覚悟だ。
あと1日、荒行でシーズンに向かう心を整える。「今年は広島全体にいい気が出ている。火の玉になってぶつかっていけばいい」。池口氏の言葉に呼応するように、新井が2016年の覚悟を口にした。「泥だらけになって、がむしゃらにやって、やっていく」。前を向く。心は既に熱く燃える。心願成就。信じる先は頂点だけだ。