黒田が語る盟友・新井のすごさ

 歩んできた野球人生と同じように、白球は一直線に左翼線へ飛んだ。4月26日のヤクルト戦(神宮)の三回、無死二塁。広島・新井貴浩内野手(39)が二塁打を放ち、通算2000安打を達成した。広島の黒田博樹投手(41)は、後輩の偉業を独特の言葉で祝福した。

 新井と黒田。場所は違えど、歩んだ道は重なる。2007年オフに広島を離れ、2015年にともに広島に戻った。2人の野球人生は、導き合ってきた絆でもある。2学年下の後輩の魅力ついて、黒田はこう表現する。

 「彼のすごさを感じたのは、日本に戻った昨年。プライドを捨てられるのが、彼のプライドじゃないかと思う。どうしても年齢がいって過去の実績がある人は、それを捨てられない人がたくさんいる。特に昨年はプライドを捨てて、また一から野球をやるんだ、というのをすごく感じた。だからただ単純に、体が強いというだけで片付けてほしくない」

 投手と野手。年も違う2人は、宿命とともに親交を深めた。エースと4番。低迷期のカープにおいて、投打の重責を任されていた。振り返れば「お客さんの入らない」スタンド。勝てない日々が続いた。「2003、04年は2人で苦しい時期を過ごした。僕も勝てなくて、新井も全然打てなくて。お互いに同じような境遇。そういう部分で、親近感はあった」。初めて2人でも酒を飲みに行った。「あの時は結構、飲んだかな」と懐かしむ。

 「2人ともあそこでくじけていたら、今は絶対なかった。それをはね返して、やり返せる強さっていうのはすごいな、と思います」

 通算2001安打。記憶に残る安打を聞けば、新井は真っ先にこの1本を挙げる。「2005年の10月7日ヤクルト戦(神宮)。黒田さんが登板して、最多勝がかっていた試合です」。4-4で迎えた八回、1死一、二塁で右翼線に決勝の三塁打を放った。シーズン最終戦で、チームの順位は既に確定。消化試合だったが、自然とガッツポーズが出た。

 くしくもそれは、黒田も同じだった。三塁側ベンチ前でキャッチボール。三塁から新井が「とんでもないガッツポーズ」を向けた。「これまでの勝利で唯一、中継ぎ登板の1勝。その時に決勝打を打ったのが新井だった。形的にもあの一本で最多勝がとれたし、結果的に最初で最後の中継ぎでの1勝。すごく思い出に残っています」。黒田と新井。高め合い、支え合い、励ましながらここまできた。

 「昔、共倒れした時期がある。それを考えれば、感慨深いですね。まさか、新井が…というね。全てのプライドを捨てて、野球に取り組んだ結果だと思います」

 昨年のシーズン中。黒田は新井と「引き際」の話をした。「誰もが引き際は苦しい思いをする。でも彼は、苦しい思いをもう一回して、それを周りに見せて引退するのも大事だと思う」。お前はやって、やって、ボロボロになって、泥だらけになって引退するべきだ-と伝えた。41歳にして現役続行を決めた黒田にも「共感」するものがあるという。

 「新井が復帰を決めた後に『あとは黒田さんですよ』と言われました。当然、彼が戻るって聞いて、多少なりとも影響は受けた」

 黒田は来年も、再来年もまだ、新井に現役を続けてほしいと願う。「彼がサラっときれいに辞めていくなんて、周りが許さない。今年の状態ならまだまだ先は長いでしょう。逆に今年、彼がいなかったら、チーム的にもこんな状態じゃなかった。ボロボロなるまでやってほしい。今、現時点でボロボロなのかも分からないけど。まだまだ、やってほしいなと思います」。シーズンは序盤。偉業は今後の弾みに、原動力になる。互いにまだ見ぬ頂点へ。投打のベテランが悲願の優勝に駆ける。(デイリースポーツ・田中政行)

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