新井、涙の“真相”…そして得た財産

 「ヤクルト3-11広島」(26日、神宮球場)

 不断の努力は才能を凌駕(りょうが)した。広島・新井貴浩内野手(39)がヤクルト(3)戦の三回、成瀬から左翼線適時二塁打を放ち、史上47人目の通算2000安打を達成した。ドラフト6位以下の大卒選手では、プロ野球史上初の偉業到達。プロ18年目で名球会の扉をこじ開けた。

 2007年11月8日。新井はFA権を行使する手続きを行い、広島市内のホテルで会見を開いた。「つらいです。カーブが大好きなので」。あふれ出す涙をこらえきれず、目を真っ赤にしてカープに別れを告げた。大好きなのになぜ…。涙の“真相”は少しだけ違う。

 「見ている人からすれば、泣くなら残ればと思ったはず。矛盾があった。でも、もう戻れないんだと思ったら、止まらなかった」

 カープが大好き…の言葉に偽りはない。だが、それ以上に師と、兄と慕う金本の存在が大きかった。「カネさんともう一度、野球がやりたい」。それが最大の要因だった。だが、会見で「金本」の名前は出せなかった。

 「正直に言えばよかった。でも、あの時は迷惑が掛かると思った。だから、優勝したいとか、本心じゃないことを言ってしまった」

 広島では優勝を目指せないのか-。結果的にこの言葉が、ファンの怒りを増幅させた。08年4月1日の広島戦(広島)。移籍して初の対戦は、大ブーイングで始まった。大人から子供まで。新井のユニホームに「×」印を付ける人までいた。

 「ショックだった。でも、俺が一番、ファンの人の気持ちが分かる。小さいころからカープファンだったから。もし自分なら、一番前でヤジったと思う」

 あの日、わずかに狂った時計の針は、7年の歳月を経て元に戻った。阪神の4番や、日本プロ野球選手会会長に就任。「本当にたくさん貴重な経験をさせてもらった」と言う。「感謝しかないですよ。僕の力じゃない。みんなの力で打たせてもらった2000本ですよ」。涙の先に多くの財産を得た。広島に戻った新井にまた一つ、大きな勲章が加わった。

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