【広島V検証】猛練習に質を加えた打撃コーチ3人体制

 「常勝鯉の幕開け 25年ぶりV検証(上)」

 黒田の涙に、新井の涙。カープ25年ぶりの優勝で全国のファンが歓喜に沸いた。12球団で最も優勝から遠ざかったチームの改革。「赤ヘル軍団」はいかにして、復活をなし得たのか。緒方監督を支えた男たちに焦点を当て、3回連載で強さの裏側に迫る。

  ◇  ◇

 歴史的な試合が行われた夜。都内のJR線車内で思いも寄らないアナウンスが流れた。「ただいま、広島カープが優勝しました。ファンの皆様、おめでとうございます」。粋な演出に25年という歳月の長さ、重さを思う。長年の苦難に耐え、全国に広がる地方球団の歓喜。選手も耐えて、勝った。

 優勝を決めた9月10日・巨人戦。今季42度目の逆転勝利だった。「シーズン通りの戦い方をしてくれた」。緒方監督は目を細め、選手を「頼もしいな」とたたえた。640得点、144本塁打、打率・275は12球団トップ。その裏に打撃コーチ3人の体制がある。

 昨季までの守備走塁から石井コーチが転身。現役引退した東出コーチが新たに加わり、迎打撃コーチ補佐がそのまま留任した。石井コーチが掲げたのは、「数字に表れない得点の取り方」。東出コーチと2人、二遊間を守った経験が打撃に応用された。

 「アウトのとらえ方にも目を向けた。いかに有効打、相手にプレッシャーを与える打撃ができるか。ゴロを打てば、そこから何が起こるかわからない」

 例えば無死一、三塁では、併殺打でも1点入ればOK。狙い球を明確にし、外れたらコーチの責任と背中を押した。8月23日・巨人戦(東京ドーム)。石井コーチは12残塁の拙攻に、粘投したジョンソンに頭を下げた。翌24日の同戦に逆転勝利し、25年ぶりのマジック20が点灯した。

 安部の反撃5号ソロから田中の同点打。丸が勝ち越し打で続き、松山のダメ押し打で試合を決めた。新井、エルドレッドが外れ、33歳の天谷が最年長のオーダー。東出コーチが言う。「丸に安部。松山にしても志願して、秋季キャンプに参加した。最後は苦しんできたヤツらが勝つ」。歩みは力強さを増した。

 秋季キャンプでは1日2000スイングが日課。実戦練習を取り入れ、接戦で1点を取る攻撃を徹底した。また、迎コーチ補佐は打撃ケージ横から新井、石原らの日々の変化も細かくチェック。的確に助言を送った。それぞれが選手に寄り添い、猛練習を支え、戦い方を明確にした。緒方監督が目指したのは伝統野球の復活。猛練習に3人の頭脳で質を加えた。選手は耐え抜き、はい上がってきた。

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