黒田「カープでよかった」 笑顔の引退会見 5日のVパレードが見納め

 今季限りで現役を引退した広島・黒田博樹投手(41)が4日、マツダスタジアムであらためて引退会見に臨んだ。25年ぶりのリーグ制覇を置き土産にユニホームを脱ぐ右腕は、日米合わせて20年間の現役生活を「出来過ぎの野球人生。カープでよかった」と振り返った。背番号「15」は永久欠番。ファンに愛され続けた男は、尽きぬ感謝の思いを口にした。

 無数のまばゆい光に、笑顔が照らされた。テレビカメラ18台、報道陣約150人が詰めかけた会見。黒田の胸には、一点の曇りもなかった。白い歯をこぼして何度も目尻を下げる。完全燃焼で終えた現役生活だ。

 「最後はリーグ優勝ができた。チームが日本一になれなかった悔しさはあるけど、自分の中では出し切った充実感がある。出来過ぎの野球人生だった。カープでよかった」

 10月18日に今季限りでの現役引退を電撃発表。最後の登板は同25日、札幌ドームで行われた日本シリーズ第3戦だった。六回1死からの85球目。大谷を左飛に打ち取ったスプリットが、最後の1球になった。広島で投げた方が「1球の重みを感じられる」とメジャーからの巨額オファーを断った。満身創痍(そうい)の体に、魂を込めて投げ続けた2年。「1球、1球が僕の中で充実していた。ファンの声援を背中に受けて(マウンドに)上がる。苦しい中で充実感と幸せな気分になった。最高の締めくくりができた」と振り返った。

 自分史はファンとともに歩んできた足跡でもある。旧広島市民球場時代、チームは万年Bクラス。「ファウルボールがスタンドに入っても、誰に当たることもなく椅子に当たっていた」。それでも声をからして応援してくれる人が1人でもいれば、勝利を目指した。負けていい試合など存在しない。それが、黒田が貫いた信念だった。

 日米通算203勝。チームの25年ぶりのリーグ制覇に貢献した。そして背番号「15」は球団史上3人目となる永久欠番になった。「自分の中で鳥肌が立ちました。15番はファン、球団の方の心配りで、もう一度ユニホームを着てマウンドに立つことができた。みなさんの背番号だと思う。15番のユニホームを見た時に今年のリーグ優勝を思い出してもらえれば幸せ」。ファンへの感謝の思いを伝えながら言葉を紡いだ。

 「解放感がある。朝、起きて体が痛くても別にいいんだと思う。その『別にいいんだ』が、すごく気持ちいい」。そう柔らかにほほえんだ。5日の優勝パレードが、最後のユニホーム姿になる。「今後?全く考えてない。取りあえず野球から離れてゆっくりしたい」と言うと、「来シーズン中にもう一回、投げたいという気持ちになるかもしれない」と冗談を飛ばした。今は、全力で戦い抜いた20年間に、感謝するだけだ。

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