巨漢右腕が復活、メジャーにアピール
12月20日、台湾で開催されていたアジア・ウインターリーグが終了した。雨天中止などで全チームの試合数はそろわなかったが、それも短期リーグの仕方ないところか。
日本から参加した選手の中では、巨人の岡本和真内野手が好成績を残した。ただ正直言って記録は二の次なのがシーズンとは異なる短期リーグの特徴。とくに今回は他国はアマチームも加わり、レベルの差が大きかった。その点、米国や中米の同種のリーグとは一緒には語れないかもしれない。
とはいえ、こうした短期リーグでプレーするメリットは計り知れない。まず日本でのシーズンにはできないことを試せる。投手、打者ともまさに結果を恐れずプレーできる。岡本もリーグ開幕時にはタイミングを狂わせていたが、グリップの位置を模索するうちに結果が表れるようになったという。
開幕直後は対戦するチームごとに投手が異なり、またその投手たちも日本人とは違うフォームが多く打者としてはタイミングを合わせていくのに時間がかかる。そんな状況で打撃フォームを修正することは容易ではない。しかし、それも修業のひとつ。今回は巨人の育成ディレクター職に就く大森剛が選抜チームの監督を務めた。当然、指導はしていたろうが、通常の混成チームでは誰も助言はくれない。自分で模索し、修正していかなくてはならない。
グランド以外も、想像する以上に大変だ。気晴らしに食事をしようと街に出ても、言葉が満足にできなければ注文ひとつできない。揚げ句、毎日がマクドナルドという選手も少なくない。そうしたことひとつひとつを苦にせずしのげるか。それとも克服して精神的なタフさを養うか。環境の整った日本のありがたみを知るのも、こうした海外での短期リーグならではでもある。
さて今回、優勝した台湾のアマチーム。NPB選抜を下しての優勝だっただけに、目を引く選手も少なくなかった。なかでも抑え投手で右腕のリャオ・レンレイは、メジャースカウトもチェックに訪れたほどだ。
1993年生まれの22歳。開南大学在学中の昨年、ピッツバーグ・パイレーツに入団し関心を集めた。身長201センチ体重120キロという巨漢。だがパイレーツではフォームをいじられたのが“改悪”となって球威、球速とも落ちたとか。結果、このオフにリリースされた。
幸いだったのが、今回のチームの監督が、開南大学の監督、つまり師匠である郭李建夫(元阪神)だったことだ。帰国後は郭李監督のもとでフォームを再修正し、腕の振りの柔らかさも戻った。制球に難はあるものの、リーグ戦では154キロを出すなど、復調傾向にある。
来季の進路は決まっていないようだが、メジャー球団へのアピールになったことは間違いない。なおこの右腕、高校は日本の岡山・共生の出身。弟も宮崎・日南学園でプレーしている。
打者ではプロ選抜ではあるがリャン・ジャーロン(ラミゴ)が目を引いた。こちらはプロ3年目の21歳。身長180センチ、90キロと決して大きくはないが、シュアな打撃ができる左打者だ。試合数が少なく、前述のようにチームのレベル差もあるため“参考記録”的な見方になってしまうが、それでも打率・489での首位打者は、センスを感じさせるに十分な数字だった。
巨人の期待のスラッガー。来季の契約が見えない台湾の大型投手。そして台湾プロ3年目の巧打者。まだまだ伸びシロのある楽しみな選手は何人もいた。
そんな選手たちがこの冬をどう過ごし、来シーズンを迎えるのか。そんな想像をさせてくれるのも、ウインターリーグの良さだ。