日本&米国流のハイブリッド?韓国プロ野球の春季キャンプ

 キャンプも終盤を迎える韓国球界。韓国は例年、10球団すべてが海外でキャンプを張っている。その半数近くは沖縄、宮崎などの日本だ。隣国という距離の近さと、なによりもNPBチーム含め練習試合の相手に恵まれているという利点がある。

 とくに沖縄はLGの石川、サムスンの恩納村赤間、SKの具志川などはもう10年、15年来と長いお付き合い(片言でも日本語を口にする選手が少なくないのは、こうしてキャンプで日本にやってきているためだ)。

 そのうちサムスンや東風平のハンファ、昨季の総合優勝したKIAは金武町と、それぞれ1カ所に根を下し、1カ月以上の長期日程をこなしている。近年はNPBとともにPRされるようになり、韓国チームのキャンプも決して珍しいものではなくなったようだ。それだけ日本の野球ファンにも身近になったということか。

 他方、NC、Ktはアメリカで1カ月間、みっちりと練習漬けだ。施設もメジャーのものを借り受け、その点では申し分ない。ただ2月中旬のこの時期にはメジャーチームが使い始めるため、両チームとも明け渡し、2次キャンプ地として西海岸に移動するのが恒例となっている。NCは球団創設の頃からアリゾナで1次を過ごし、2次はロサンゼルスに移って地元の大学チームなどと対外試合を行っている。Ktも同じカリフォルニア州サンバナディーノに移動する。以前は「なかなか練習相手を見つけられず、実戦不足の時期があった」(NC関係者)というが、毎年、実施する中で補えるようにもなった。

 ちなみにNCなどの食事はアメリカでも韓国食中心。ロサンゼルスから在米韓国人の韓国料理店と契約し、おばさんたち数名にアリゾナに来てもらっている。アメリカのホテルは朝食は出しても日本のように夕食を提供することはないため、必要に迫られて招いている。その分、味は“本物”だけに安心だ。

 一方、日本のホテルは朝食、夕食と提供し、ホテルによっては球場に昼食をデリバリーするところもある。ときには昼食がマックのみ、ということもあったりするが、概ね昼食はプルコギ、キムチ、スープといった簡単な韓国料理のバイキング。夕食もバイキングスタイルでやはり韓国料理中心だが、若い選手たちには刺身など日本食も好評。ただ夕食のあとに夜間練習がある場合が多いため、そうのんびりとは出来ないのだが…。

 韓国チームのキャンプというと「時間がやたら長い」というイメージがあるらしい。折に触れてNPBや記者仲間と話していると、そんな質問を受けることがある。だが実際は違う。かつて一部のチームが長かっただけで、概して韓国チームは練習時間は短い。そして、その練習も全体練習より個人練習に充てている時間が多いように思う。それでいて夜間練習をするチームも多いから、あえて表現するとしたら日本と米国双方の特徴を取り入れていると言えるだろうか。

 時間の多さ、練習の密度は一概に言えないから、その善し悪しを問うことは無意味だ。

 ただ今季は各チームとも、手探りの部分も多いのではないかと思う。それは例年に比べ、キャンプ期間が短くなっているからだ。

 これまで韓国のキャンプは各チームとも1月中旬からスタートしていた。厳冬の韓国。自主トレをしようにも思うように身体は動かない。海外で自主トレをする選手もいたが、それもごく一部。そんな背景もあり、1月中旬からというのが、いわば慣習だった。

 ところが今季から、選手会の強い意向によって2月1日一斉に開始となった。さらには開幕が3月24日と、例年に比べ1週間ほど早い。そのぶん韓国に帰国後のオープン戦は減ってはいるが、つまり始まりが2週間遅く、開幕が1週間早いタイトな日程となったのだ。

 にもかかわらず、キャンプ当初の選手たちの動きは、例年に比べて鈍かったチームが多いと聞く。選手にしても、2週間遅れたキャンプ開始にあわせて身体作りも試みたのだろうが、やはり寒い中では思うようには進まなかったのだろう。あるチーム関係者は「投手など、もう少し身体作りに時間を割きたいが、もう実戦が始まってしまったため、コンディションの引き上げに苦心している」という声も聞かれる。

 対外試合があっても選手によっては参加せず調整に充てたいところだが、2次キャンプのチームの多くは本拠地を持たず、試合ごと相手チームのグラウンドを転々とすることを余儀なくされている。投手もブルペンを借りることは可能だが、それでも投げ込みには限界がある。

 「実戦も増える中旬以降は疲れも溜まり、故障の不安もある。とにかく今は、ケガなく帰国させられたらキャンプ成功といえるかも知れない」。沖縄でキャンプを過ごすあるチームのコーチは、苦笑しつつそう言った。

 果たして日程の変化が、開幕後の各チームの調子にどの程度影響を与えるのか、否か。コーチら関係者は、ちょっと気をもむキャンプ終盤だ。(スポーツライター・木村公一)

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