徳島・橋本イップス克服「抑え」で復活
【徳島・橋本 隼投手】
橋本隼は一昨年、愛媛で35試合に登板し4勝を挙げている。だが昨年は8試合にしか登板していない。理由は、思ったところにボールが投げられなくなっていたからだ。
「リズムつかんだら投げられるときもあるんですけど、どうしてもダメでしたね。練習のキャッチボールでもダメで。だんだん自分自身が嫌になってきて……」
昨年9月、東予球場で完封負けを喫した試合後、当時の主将・藤長賢司から火の出るような勢いで叱り飛ばされたことがある。ふがいない投球しかできずにマウンドを降り、まだ試合が終わっていないにも関わらず、声も出さないで自分の殻に閉じこもっていたからだった。
「みんな、必死になってやってんねん!お前の尻拭いしてくれた奴もおんねん!お前、声かけたんかい!副キャプテンやのに、そんなんでええんか!」
けん制球までワンバウンドになってしまうような状態にパニックを起こしていた。もがき苦しみ続けるなか、周りが見えていない。帰りのバスではもう、自己嫌悪しかなかった。
しかし、好転のきっかけは突然訪れる。坊っちゃんスタジアムで行われたチャンピオンシップ第3戦のウォーミングアップ中だった。
「ずっと『前の自分に戻そう。投げられる状態に戻すんだ』と思っていたんですけど『ああ、ダメだ。新しくするしかないな。新しい自分を作ろう』と思ったら急に『あ、いけるかも……』って」
以前、元アイランド・リーガーの篠原慎平(巨人育成)が肩の手術から復活した記事を読んだ。「前の自分に戻るのではなく、新しい自分を作ろう」そう考えていたというエピソードが、記憶の片隅に残っていた。
徳島の球団代表、坂口裕昭は「橋本は島田前監督の“置き土産”なんです。『もし、愛媛が橋本をリリースすることがあったら、徳島で面倒を見てやってほしい。あいつはまだまだやれるはずだから』そう言って、横浜に行ったんです」と言う。
徳島でクローザーという難しい仕事を与えられながら「復活」と言える活躍を見せている。