香川・甲斐 第2の人生も香川から
【香川・甲斐弘樹内野手】
一死満塁のピンチを切り抜けたあとの九回裏一死、香川にサヨナラの走者が出た。次打者の送りバントが決まり、二死二塁となる。打席に向かう甲斐弘樹の背中に、ベンチから西田監督の大きな声が飛んだ。
「甲斐-っ! 任せたけんのーっ!」「はい!」
2球目のスライダーを引っ張った打球が三塁線を抜ける。2015年チャンピオンシップ第1戦(9月20日、レクザム)は、甲斐のサヨナラヒットにより香川が劇的な勝利を収めた。
観客を見送りにコンコースに上がる。故郷・大分から駆け付けてくれていた両親、祖父母が「ようやったのお!」と喜んでくれた。
安定感のある守備だけが持ち味ではない。ここ一番での勝負強さこそが魅力の選手だった。6年間で出場した公式戦の数は399試合である。「そんな出てたんですか! 思ったより多い!」と驚いていた。
「悔いが残るような形でだけは辞めたくなかった。自分がスッキリできたんだったら、そこで辞めたらいいと思っていたので」
第5戦に敗れ、総合優勝を逃した瞬間「終わったな……」と思った。だが、気持ちは晴れ晴れとしている。
愛媛ベンチにあいさつに行く。森山一人コーチが「お前にはほんま、要所でやられたわ。6年やったっけ。お疲れさん」と労ってくれた。加藤博人コーチが「6年もやったしなあ。次の道で頑張れよ! またどっかで会おう!」と激励してくれた。2人は甲斐のことを1年目から知っている。
「うれしかったですね。同じチームでやることはなかったですけど。『やってて良かったな』って思えた瞬間でした」
1月5日付けで香川日産自動車(株)に入社した。一人前のカーライフアドバイザーを目指し、目下研修中だ。香川での6年間と、野球が結んでくれた縁でもある。
「新しい環境で頑張ってる僕を見に来てほしいですね。ぜひぜひ、香川に住んでる人は、香川日産に来て下さい!」
「アイランドリーグはちょっとした夢を見させてくれた場所」と言った。山あり谷ありの6年間を終え、新たな道へと進む。