【香川・太田圭祐投手】

　香川戦の一塁側スタンドには「日々感謝」と書かれた横断幕が掲げられている。太田圭祐が卒団した「東岡山ボーイズ」のスタッフ、父母会から寄贈されたものだ。個人スポンサーとして応援し続けてくれている。

　「ありがたいです。この間も岡山から見に来てくれて」

　中学、高校と背番号「１」を背負ってきたプライドは、香川での２年間でズタズタにされた。これまでは僅差のゲームやリードを守る場面での起用よりも、敗戦処理のマウンドに登ることのほうが多かった。

　「『結果が出てない』と割り切っていたので。投げられることに感謝しないといけない。どんな状況、場面であろうが、マウンドに登れることを感謝して。（試合で）投げないと打者の反応も分からないので。そのなかで結果が出れば、みんなからの信頼も得られる」

　昨シーズンを終え、何かを変えなきゃいけないと強く思っていた。昨年末、１年間のお礼を言いに東岡山ボーイズを訪れたとき、その思いはさらに強くなる。

　「めっちゃ応援してくれているのが心に響いて。絶対変わらないかん－－」

　正月返上で香川に残った。やれることは全部やろう。ジムに行く回数を増やし、部屋にトレーニング器具が増えた。

　目指したのは制球力アップである。股関節にしっかり体重を乗せるイメージを持つ。投げる度に変わっていた腕の角度も、自分に合う角度を見つけた。フォームの安定が結果へとつながり始めている。

　今季、敗戦処理ではなく勝つためのセットアッパーとしてマウンドに登る。

　「絶対抑えなくちゃいけないって気持ちもあるんですけど、心のどこかで『野球を楽しもう』って思ってますね。ホントに。それを思い始めてから、体が固くならなくなったというか。めちゃ楽なんですよ。気持ち的に。『よっしゃ！楽しむぞ！』みたいな」

　そう言い聞かせて、緊張で固くなりがちな自分の気持ちまでコントロールする。

　３年目、変わった姿で今年こそ。応援してくれる人たちへの恩は、ＮＰＢから指名されることで返す。