“モンゴルの怪物”逸ノ城が無傷6連勝
「大相撲秋場所・6日目」(19日、両国国技館)
新入幕の逸ノ城(21)=湊=が旭秀鵬を得意の右四つに組み止め、寄り切りで快勝した。次代の大相撲界を背負う大器が初日から6連勝を決め、ストレート勝ち越しへ向けて勢いは止まりそうにない。白鵬は嘉風を寄り切り、鶴竜は宝富士を突き落としで下して、両横綱は危なげなく全勝をキープ。勝ちっ放しはこの3人だけ。逸ノ城が優勝争いに加わるようなら、後半戦は上位力士との対戦が実現しそうだ。遠藤は元気なく6戦全敗となった。
これは本物だ。逸ノ城は連日の長い相撲になりながら、1分28秒8もかけて最後は旭秀鵬を万全の右四つで組み止めて寄り切り。11年夏場所の魁聖以来となる新入幕力士のストレート勝ち越しへ、あと2勝とした。
5日目の千代鳳戦も1分30秒を超える相撲だったが、無限の潜在能力を秘める21歳のスタミナは無尽蔵だ。旭秀鵬に左前ミツを取られて右半身になる不利な体勢になっても絶対に慌てない。投げ、寄りをしのいで、相手の頭が起き上がったところで“待ってました”と言わんばかりに左上手をがっちりつかんで万全の形をつくった。あとは前に出て寄るだけ。憎らしいほどの強さに、館内からどよめきのような歓声が上がった。
立ち合いに失敗して相手十分になりながらも「我慢していれば何とかなると思いました」と平然としたもの。初日から6連勝にも「全然意識しない。変わりません」と、悠然と答えた。対戦相手の研究を上回る想定外のスケールの大きさで白星を積み重ねる。
この怪物を誰が止めるのか。1960年1月、新入幕の大鵬は初日から11連勝で突っ走り、横綱栃錦と優勝争いのトップを並走。当時の審判部はストッパー役として12日目に小結柏戸をぶつけ、柏戸は左からの下手出し投げで大鵬を下した。そんな伝説の逸話を思い起こさせるほど、今場所の逸ノ城の活躍ぶりは目覚ましい。
このまま勝ち進めば、中盤以降は前頭上位との対戦が組まれることが濃厚。さらに、両横綱とともに終盤まで優勝争いに残るようなら、07年9月に豪栄道が14日目に白鵬と対戦して以来の新入幕力士の横綱戦が組まれる可能性も十分。どこまで勝ち進むのか、“モンゴルの怪物”の快進撃から目が離せない。