逸ノ城“負け越し知らず大関昇進”挑む
「大相撲初場所」(11日初日、両国国技館)
昭和以降、3人目となる負け越しなしでの大関昇進なるか-。大相撲の関脇逸ノ城(21)=湊部屋=が初場所で、三役では自身初となる2桁勝利を目指す。初土俵から猛スピードで番付を駆け上がり、次期大関候補No.1に躍り出た。このまま快進撃が続けば、負け越し知らずで大関になった武蔵山、羽黒山に次ぐ快挙達成の可能性は十分ある。
まさに超新星。逸ノ城の出現はあまりにも衝撃的だった。昨年の秋場所、横綱鶴竜を破って新入幕力士として41年ぶりの金星奪取。千秋楽まで優勝争いに残り、あと一歩で100年ぶりの新入幕力士Vかという大活躍。白鵬にさえ「本当の怪物が現れた」と言わしめた。
一気に関脇まで番付を上げた九州場所では試練を乗り越えた。帯状疱疹(たいじょうほうしん)で秋巡業を途中離脱、腰痛もあって場所前に関取衆との稽古はゼロ。稽古不足で臨み、8日目に4勝4敗になった時には、師匠の湊親方(元幕内湊富士)も「さすがに勝ち越すのは無理だろう」と腹をくくった。
それでも後半戦に踏ん張って8勝7敗で勝ち越し。「改めて地力の高さを認識した。一番にかける集中力がすごい」と師匠も愛弟子の潜在能力を思い知らされる結果となった。
その無限のエネルギーを秘める怪物が75年ぶりの快挙を目指す。1940年の羽黒山以来となる初土俵から負け越しなしでの大関昇進だ。角界には目に見えない番付の壁が存在する。58年の年6場所制以降、入幕からわずか6場所で大関になった大鵬ですら、入幕2場所目に上位の壁にはね返され負け越しの屈辱を味わっている。
朝青龍、白鵬ももちろん例外ではない。だが、逸ノ城には常識を覆す可能性がある。昨年末の番付発表での記者会見。逸ノ城は胸を張って「2桁勝てるように頑張りたい。もうひとつ上の番付を目指したい」と大関を狙うことを宣言。大関昇進の目安は三役で3場所合計33勝以上。初場所で2桁勝利を挙げれば、足掛かりを築くことになる。
師弟が掲げる大関とりのポイントは立ち合いだ。年末は追手風部屋、年明けには時津風部屋へ出稽古し、踏み込みや左上手の取り方の改善に余念がない。右四つの型は鳥取城北高時代からこだわる必勝パターン。「高校からずっとこうだったから」と、右四つに組んでしまえば絶対に負けない自信がある。
双葉山、千代の富士、貴乃花、そして白鵬。右四つを極めた大力士の域に近づくことができれば、歴史を変える偉業が達成される。