桐生、左太もも裏張り“再発”で棄権
「関東学生対校選手権」(15日、日産スタジアム)
男子100メートルで、日本人初の公認9秒台の期待がかかった桐生祥秀(19)=東洋大=は準決勝で左太もも裏の張りを覚えたため、大事を取って決勝を棄権し、2連覇はならなかった。次戦のダイヤモンドリーグ第7戦、ニューヨークGP(6月13日・米ニューヨーク)は予定通り出場するが、世界選手権の参加標準記録(10秒16)を突破しておらず、100メートルでの2大会連続出場に黄信号がともった。ケンブリッジ飛鳥(日大)が10秒33で初優勝した。
男子100メートル決勝直前、桐生欠場がアナウンスされると、9秒台を期待していた会場が失望感に包まれた。全競技終了後、桐生は「出たかった。また『国内で駄目』って言われてしまう」と、苦笑いの中に悔しさをにじませた。
準決勝で左太もも裏がけいれんした。決勝直前までスタートダッシュで動きを確認したものの、不安はぬぐえなかった。東洋大の土江コーチは「出場しても10回に1回ケガをするかどうかの状況」と軽症を強調した上で「今季の目標は世界選手権。そこに向けて、小さなリスクを取るべきかどうかで決断した」と説明。今大会の残る種目は欠場する。
桐生は昨年も左太もも裏を肉離れし、アジア大会を欠場している。本人は「痛みもないし、すぐに練習を始めるつもり」と今後の大会出場は予定通りとしたが、古傷の周辺だけに予断は許さない。
世界選手権出場にも黄信号がともった。3月の米国でのテキサスリレーで追い風参考記録ながら9秒87を出したものの、公認では世界選手権参加標準記録の10秒16を切れていない。「ここで出したかった」と桐生。青写真が狂ったのは確かだ。
残る出場予定レースは100メートル、200メートル世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)と対戦するニューヨークGP(米国)と、連覇のかかる日本選手権(新潟)の2つ。100メートルで世界の頂上決戦に駒を進めるためには、どちらかで10秒16を突破しなければならない。「ここからバイオリズムは上がっていくと思う」と前を向いたが、公認9秒台目前と思われた若武者が、一転してピンチに陥った。