坂口佳穂 ビーチバレー界に“新妖精”
2020年東京五輪開幕まで、24日であと5年。“ビーチの妖精”と称された浅尾美和さんらにけん引された一時期のブームが去り、正念場に立たされているビーチバレーに、新たなヒロインとして期待されている選手がいる。愛らしい笑顔が印象的な坂口佳穂(19)=川崎ビーチスポーツクラブ=はビーチ転向2年目ながら、着実に成長を遂げている期待の新星だ。美女アスリートの宿命を背負いながら、トップを目指して奮闘する“新ビーチの妖精”の思いに迫った。
小麦色に焼けた肌が、すらりと伸びた手足が、そしてキュートな笑みが、見る者を引きつける。高校時代はダンス部。芸能活動もしていた坂口が、ビーチバレー挑戦を決めたのは、高校3年生の時に見に行った大会がきっかけだった。
「すごい。砂の上であんなに動けるなんて」。小学校から中学まで9年間、バレー部に所属した。「もう1度やりたい」。気持ちが芽生えていたころに、新たなバレーの形と出合い、魅了された。
競技面では、まだまだ“原石”の域を出ない。競技歴はまだ1年半。現在、坂口は14年に設立された日本ビーチバレーの“虎の穴”、川崎ビーチスポーツクラブに入り、元五輪選手もいるコーチ陣に指導を受けている。
大学に通いながら、週5日、約5時間の練習をこなす。主戦場は下部ツアーが中心で、試合ではペアは固定せず、いろんな先輩と組みながら、勉強する日々。サーブで狙われるのは、「百発百中」で坂口だ。まだまだ勝つことより、負けることの方が多い。学業との両立に苦労し、帰り道に涙することもあった。
選手として発展途上な中で、注目されることに「実力がないのに申し訳ない気持ち」と戸惑うこともある。美女アスリートと呼ばれる選手の誰もが抱える、結果と注目度のギャップによる葛藤。そんな状況も、負けず嫌いの19歳は上達への活力としている。「今は“なんだこいつは?”って思われていると思う。だから早く強くなりたい。それがモチベーションになっている。やる気満々です」と、白い歯がこぼれた。
今の目標は日本のトップ選手になること。将来プロになるかは決めてない。5年後の東京五輪についても「まだ、私が五輪選手になりたいっていうのは失礼」と、冷静に足もとを見つめている。
今はとにかく全力で競技と向き合って、未来を切り開くつもりでいる。座右の銘は「可能性は無限大」。いつか大きく羽ばたける日を信じて、新たな“妖精”は今日も砂の上を舞う。
◆日本のビーチバレーの現状
女子で日本をけん引しているのが、西堀健実(フリー)、溝江明香(アットホーム)組だ。昨年12月のワールドツアー・マンガウング大会で準優勝。今年4月のアジアツアーで優勝し、世界ランク33位につけている。田中姿子(フリー)、草野歩(ミキハウス)組が69位で続く。男子は苦戦が続いており、高橋巧(了徳寺大職)、長谷川徳海(ミキハウス)組の94位が最高。※世界ランクは7月13日発表。