白鵬、猫だまし2発「うまくいった」
「大相撲九州場所・10日目」(17日、福岡国際センター)
ただ一人全勝で単独トップの横綱白鵬は、関脇栃煌山に対して立ち合いで猫だましを繰り出す珍事。最後は右四つから寄り切って10連勝としたが、横綱としてはふさわしくない奇襲に北の湖理事長(元横綱)は「やる方もやる方。しかも横綱だから、負けていたら笑いものだった」と酷評した。横綱日馬富士が1敗を守り、大関稀勢の里、平幕の松鳳山、高安は2敗に後退した。
白鵬と栃煌山が立ち上がった瞬間、手をたたく音が響いた。何と白鵬が奇襲、猫だましを繰り出した。さらに、すぐに左へ変化。体が泳いだ栃煌山が向き直ると、白鵬は再び両手をたたいてまたも猫だまし。右四つから寄り切り10連勝としたが、今場所6度目の満員御礼が出た館内は微妙な空気に包まれた。
支度部屋に戻ると白鵬はご満悦だった。両手でパチンとたたく動作をしながら「勝ちにつながったのでうまくいったことにしましょうかね」と笑みを浮かべた。本場所で猫だましをやったのは初めて。横綱の相撲としてはどうか、との質問には「こういう技もあるんだと思うのではないか」と釈明せず「とっさではない。一度はやりたかった?まあね」と意図的な作戦だったことを否定しなかった。
役員室で取組を見届けた北の湖理事長は「横綱がやるべきではない。前代未聞。考えられない」とし、続けて「猫だましは勝てないと思う(番付上位の)相手にやるもの。もし、あれで負けてたら笑いものだよ」とバッサリ。優勝争いが佳境に入る段階で、緊迫感に欠ける内容に不快感をあらわにした。
とはいえ、追いすがる1敗は日馬富士のみ。白鵬が11日目の稀勢の里戦に勝ち、照ノ富士が敗れれば、9年連続の年間最多勝も確定する。帰り際には「楽しんでます」と締めくくった“大横綱”がV36へ圧倒的に有利な状況だ。