羽生、自身のSP世界最高記録を更新
「フィギュアスケート・GPシリーズ最終戦・NHK杯」(27日、長野ビッグハット)
男子ショートプログラム(SP)が行われ、3位以内で12月のGPファイナル(バルセロナ)進出が決まるソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20)=ANA=が、自身のSP世界最高記録を更新する106・33点をマークし、断トツの首位発進を決めた。羽生は今大会から挑戦した2本の4回転ジャンプを入れた構成を完遂。自身2度目の100点超えで、14年ソチ五輪で記録した101・45点を上回った。10・69点差の2位には金博洋(18)=中国=がつけた。フリーは28日に行われる。
歌舞伎の見得を切るような鋭い視線が、見るものの心を射貫いた。鬼神のごとき表情でフィニッシュを決めた羽生が、確信したように力強く腕を振り下ろした。表示された衝撃の得点は106・33点。世界を驚かせた14年ソチ五輪の完璧なSPを超える世界最高得点で、銀盤に新たな金字塔を刻んだ。
直前に中国が誇る“4000年に1人”の天才ジャンパー、金博洋が目下世界最高峰の大技、4回転ルッツ-3回転トーループを決め、95・64点の高得点をマーク。しかし、それが羽生の闘争本能をさらにたぎらせた。
冒頭の4回転サルコーでやや軸が曲がったが、なんとか耐えきると、一気に波にのった。続く4回転-3回転の連続ジャンプにも試合で「初めて」成功。ショパンの激情的なピアノ曲を体現し、表現力を示す5項目の構成点では異次元の9点台が並べた。内容、得点とも文句なしの結果に、ブライアン・オーサーコーチも「これが見たかったんだ!何も言うことはない」と、頬を紅潮させてまくし立てた。
羽生ならではの挑戦心が、驚愕の得点を生んだ。「現五輪王者として、連覇をするためにも、さらに挑戦しないといけないと思った」。もともと今季から後半に4回転を入れる意欲的な構成だった。
今季初戦、2戦目とともに後半の4回転が決まらず、完璧といえる内容ではなかった。それでもスケートカナダ後に感じたのは構成自体への物足りなさ。将来的に思い描いていたSPに4回転サルコー、トーループの2本を入れる構成を前倒しで導入することを決めた。
オーサーコーチは「私はマイナーチェンジを提案した。私は保守的だったが、ユヅは野心的だった」と、振り返る。連覇の懸かる3年後の平昌五輪を見据え、最高の構成を模索している。
GPファイナル出場圏の3位以内、優勝はもちろん、SP、フリー合計での世界初の300点超えも視野に入ってきた。「フリーも一生懸命練習してきた。また、切り替えて頑張りたい」。終わりなき究極を求める“氷上の求道者”が刻む軌跡が、新たな伝説を紡いでいく。