川内「天罰だな」8位で五輪絶望的

 「福岡国際マラソン」(6日、平和台陸上競技場発着)

 16年リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて行われ、“最強市民ランナー”川内優輝(28)=埼玉県庁=は2時間12分48秒で日本人4番手の8位に終わり、五輪出場は絶望的となった。ベテランの佐々木悟(30)=旭化成=が2時間8分56秒で日本人トップの3位に入り、初の五輪出場へ前進。前年覇者で元世界記録保持者のパトリック・マカウ(30)=ケニア=が2時間8分18秒で連覇を達成した。

 “最強市民ランナー”の夢が、無残に砕け散った。トラック勝負となった日本人3番手争いに敗れ、ゴールした川内はタオルをかぶり、這いつくばったまったまま約4分間動けなかった。「力を出し切って負けるならしょうがない。なぜこうなったのか普通に走って、普通に負けたかった。こういう形で終わりになって申し訳ない気持ちでいっぱい」。声は詰まり、瞳に涙が滲んだ。ロンドン五輪落選から4年、最大の目標だったリオ五輪出場は絶望的となった。

 まさかの事態が襲った。順調にペースを刻んでいた10キロ手前で左足ふくらはぎがしびれ始めた。しびれは足底部まで広がり、集団から脱落。終盤に入り、怒とうのような追い込みを見せたが、時すでに遅し-。過去、同じレースを走った選手が足を痙攣した時「調整不足だなと思っていた」という。それが自分に降りかかり「天罰だなと思う」と、自嘲気味に話した。

 驚異的なタフネスぶりを見せていた川内も、この1年は怪我が泣かされた。昨年12月の左足首ねんざを発端に、次々と故障。それでも国内外レースに出続けた。「招待を受けた以上は走る。それが自分のポリシーだから」。貫き続けてきた自らの信念が、体を蝕んでいったのか…。

 それでも一時は大きく遅れながら、魂の走りで8位まで順位を押し上げた。支えてくれたのは沿道からの声援。「途中棄権するという選択肢はまったくなかった。沿道の応援を聞いていたら、辞める選択はないですよ」。日本全国、そして世界を駆け回り、走る楽しさを伝えてきた男を誰もが応援していた。声援に背中を押されての追い上げを「この状況で8位は奇跡だと思う」と、振り返った。

 17年ロンドン世界選手権まで第一線で戦う意志を明らかにしているが、川内にとって五輪はこれが最後の挑戦だ。残る可能性は来年2月の東京マラソンか同3月のびわ湖毎日に出場し、陸連の設定する2時間6分30秒をクリアするしかない。「今は何も考えられない」。つぶやかれた言葉は、師走の冷たい風に流されていった。

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