北島康介「言葉にならない」五輪に暗雲
「競泳・日本選手権」(5日、東京辰巳国際水泳場)
2種目で決勝が行われ、男子100メートル平泳ぎは04年アテネ、08年北京2大会連続2冠の北島康介(33)=日本コカ・コーラ=が、59秒93で2位。優勝した小関也朱篤(24)=ミキハウス=とともに派遣標準記録(59秒63)に届かず、リオ切符は200メートル平泳ぎ(7日に予選と準決勝、8日に決勝)に持ち越しとなった。
あまりに残酷な結末が待っていた。タイムを確認した北島は、ゴーグルをかけたまましばらくうつむいた。「言葉にならない…」。会場で愛妻と長女が見守る前で、吉報を届けられなかった。
夏季五輪では日本最多タイとなる5大会連続五輪は、手の届きそうなところまできていた。4日の準決勝では派遣記録を突破してトップ通過。決勝でも再現すれば-誰もがそう思ったが、4年に1度の重圧、期待、ライバルの影がちらつく。決勝では「自分のスピードを過大評価した」と守りに入ってしまい、唇をかんだ。まな弟子のらしくないレースに、平井コーチは「集中して野獣になれなかった」と残念がった。
復活への道のりは順調だった。近年は精彩を欠き、昨年まで2年連続で代表から落選。引退も考えたが、平井コーチから「燃え尽きてないんじゃないのか」と諭され、再び火がついた。
本来の泳ぎを取り戻すためには練習しかなかった。昨年11月以降2度の高地合宿に臨み、40度の熱を出すほど体を限界まで追い込んだ。年明けから徐々にタイムを上げ、準決勝では3年ぶりに59秒台に乗せるなどスピードは戻ってきていた。
リオ五輪への望みはまだある。一度はスタミナへの不安から断念も考えた200メートル平泳ぎも、体力強化の一環でしっかり準備してきた。「やっといて良かった。自信はある。派遣(標準記録)を必ず切って2番以内に入る。気持ちを切り替えて…頑張ります!!」。土壇場で何度も底力を発揮してきた33歳は、自分に言い聞かせるように叫んだ。