室伏引退へ “鉄人伝説”雨中終えん

 「陸上・日本選手権」(24日、パロマ瑞穂スタジアム)

 男子ハンマー投げで、2年ぶりの競技復帰となった04年アテネ五輪金メダリストの室伏広治(41)=ミズノ=は64メートル74で12位に終わり、5大会連続の五輪出場は絶望的となり、第一線を退く意向を表明した。

 “鉄人伝説”が終えんの時を迎えた。雨の降りしきる中、3投目がファウルになるのを見届けると、室伏は観衆に向け手を合わせた。日本選手権では3位だった94年大会以来、22年ぶりの敗戦。テントで後輩たちと握手を交わすと、晴れ晴れとした表情で現役引退を表明した。

 「五輪、世界を目指すには体力の限界を感じた。寂しいけど、誰しもいずれやってくること。1つの区切りです。今後は後輩たちに期待したい」

 2年ぶりの競技復帰は決して、五輪出場だけが目的ではなかった。力の衰えは分かっていた。4月に起こった熊本地震で苦しむ被災者への希望。40歳を超えた中でのアスリートとしての挑戦心。そして昨年、結婚した中で家族とともに最後に何かを目指したい。さまざまな思いが、“鉄人”を再びスタジアムへと立たせた。

 わずか2カ月の準備期間。父・重信氏とともに、若き日のように鉄球のことだけを考え抜いた日々を「アスリートとしての体験は大変だけど、すごく楽しい。大切な時間だった」と笑った。

 20年東京五輪組織委員会のスポーツディレクターに、東京医科歯科大の教授、日本オリンピック委員会と日本陸連の理事と多忙を極める41歳。今後はあらためて競技を離れ、日本のスポーツ界の発展のために尽力していく。

 「競技者として、自分の役割は終わった」。アテネでの日本人投てき種目初の五輪金メダルに、日本選手権20連覇。空前絶後の金字塔と偉大な足跡を残し、日本が誇る最強の“鉄人”は、笑顔でフィールドを去った。

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