競歩・松永大介、ど根性でメダル狙う
日本史上初の五輪メダルの期待が懸かる競歩にも、楽しみな新鋭がいる。陸上の男子20キロ競歩代表の松永大介(21)=東洋大=は、高校時代、靴が脱げ、足の裏をやけどしながらでも歩き抜いた“ど根性”の持ち主。14年世界ジュニア選手権1万メートル金メダリストというポテンシャルと、驚異の忍耐力を併せ持つ若きウオーカーに、リオで“激歩”の予感が漂う。
好きなアイドルはももいろクローバーZの高城れにという素顔は今どきの大学生。ただ、ひとたび歩き出せば、その一歩一歩には底知れぬ闘争本能と、忍耐力が宿っている。代表入りを決めた3月の全日本能美の優勝タイム1時間18分53秒は今季世界ランク3位。十分メダル圏につける21歳は「金メダルを目指す」と、初の夢舞台にも臆することはない。
松永の強靱(きょうじん)なメンタルを象徴するエピソードが、横浜高校2年時の“幻の日本一”事件だ。高校総体の5000メートル競歩に出場。しかし、2000メートル付近で左足の靴が脱げるアクシデントが発生した。気温35度を超える8月の強い日差しを受けたトラックは、尋常ではない熱を帯びていた。
片足靴下のままど根性で3キロを歩き切り、トップでゴールしたが、直後に両足が同時に宙に浮く反則があったとして失格となり、号泣した。担がれて運び込まれた救護室。水ぶくれになった左足は包帯でぐるぐる巻きとなった。横浜高時代の恩師、田下正則さんは「自分を貫き通してやり遂げる強さがあった。(甲子園常連の)野球部からも一目置かれていた」と、その芯の強さに舌を巻く。
競泳の萩野公介、陸上短距離の桐生祥秀と各界の逸材が集う東洋大だが、競歩界の“ワンダーボーイ”も負けるつもりは毛頭ない。世界ジュニア金メダル、ユニバーシアード銅メダルと国際舞台の強さは折り紙付き。「自分は世界大会をあまり外してない。気負わずに行けば、メダルも視野に入る」。逆境は大好物の若武者が、メダルロードを力強く闊歩(かっぽ)する。