稀勢の里、3場所連続綱とりの成否は…ノーモア北尾の声も
大相撲秋場所(9月11日初日、東京・両国国技館)で3場所連続の綱とりに挑む大関稀勢の里(30)=田子ノ浦=は悲願を達成できるのか。相撲人生をかけた勝負の場所を前に、その成否を占ってみた。
まず、ベースとなる横綱昇進条件は先場所と変わらない。昇進を決める理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請する立場にある審判部(二所ノ関部長=元大関若嶋津)は、先場所まで13勝、13勝、12勝の成績を評価し、勝ち星数に関係なく初優勝イコール昇進の方針を秋場所も維持する。同部長は「初優勝すれば(昇進)」と話し、同部の友綱副部長(元関脇魁輝)も「1度(の優勝)でいいと言っているんだから」と、なかなか期待通りの結果を残せない大関にやきもきしている状態だ。
稀勢の里にとって心強いのは、理事長からの諮問を受ける横綱審議委員会(守屋秀繁委員長)の“心変わり”だろう。夏場所後の定例会合後は、14勝以上の高い星を残しての優勝を絶対条件としていたが、名古屋場所後は優勝なら勝利数に関係なく昇進-と協会の方針に沿ったかのように軟化してきている。委員の中には優勝なしでも12、13勝の星なら昇進を推挙していいのでは、との声もあったという。
というわけで、全体としての綱とりへのハードルは先場所よりも確実に低くなっている。ただ、初優勝だけはほしい。ここまでの綱とり挑戦の足跡は、前述の通り、昇進していてもおかしくない成績ではあるが、やはり優勝がないのは具合が悪い。過去に北尾(横綱双羽黒)という、唯一優勝なしで昇進し、すぐに廃業した失敗例が安易な昇進推挙に対するブレーキになっており、審判部も、横審も、さすがに優勝なしで推挙に踏み切ることはできないようだ。
横審の軟化により「初優勝した場合も14勝以上の高い星」を挙げる必要はなくなった。つまり12勝の低い星で決定戦になり、それを制しての初優勝でも昇進できるということ。今場所は間違いなく相撲史上最も安易な綱とり条件だろう。日頃の精進と強い気持ち、思い切った立ち合いと盤石の左四つがうまくかみ合い、この強い追い風に乗り切れれば、秋場所こそは綱に手が届くはずだ。(デイリースポーツ・松本一之)