キャリア官僚から転身、Bリーグ・香川の社長「大きなチャンス」

 男子プロバスケットボールの「Bリーグ」が9月22日に開幕する。ナショナルリーグ(NBL)とbjリーグに分裂していた国内リーグが統合。Jリーグ初代チェアマン、川淵三郎氏(現日本バスケットボール協会エグゼクティブアドバイザー)の主導によって実現した日本バスケの新たなスタートに期待が高まっている。

 「Bリーグの発足によって、日本のバスケットボールが加速度的に盛り上がる可能性がある。厳しい経営状況が続く我々のクラブにとっても大きな成長のチャンスなんです」。そう話すのは、B2(2部リーグ)に所属する「香川ファイブアローズ」(本拠地・香川県高松市)の星島郁洋社長(39)だ。

 同社長は、元キャリア官僚という異色の経歴を持つ。岡山市出身で、京大法学部卒業後の2001年に経済産業省に入省。WTO(世界貿易機関)の通商交渉や原子力安全・保安院、中小企業への金融支援政策などに携わった。転機は2010年春。上司に誘われて初めて試合を観戦したbjリーグの面白さに「完全にハマってしまった」という。

 「日本を元気にしたくて経産省で10年近く仕事をしてきたけど、役所ができることは限られていると感じていました。そんな時期にbjリーグに出会った。これこそが地域を元気にし、日本を元気にするだろうと感じたんです」

 米国留学の経験があり、ベンチャー経営に魅力を感じていた同社長の決断は早かった。3カ月後には経産省を辞め、バスケの世界に飛び込んだ。リーグからの要請を受けて同年7月、経営破綻していた高松ファイブアローズ(当時)の社長に就任。球団の再建に力を注いできた。

 さまざまな経営改善策を打ち出してきたが、現在も状況は厳しいままだ。1億円を超える債務超過は解消できておらず、選手獲得などの強化費が乏しいチームはbjリーグで下位低迷を続けた。チームが弱ければ観客も増えず「非常にしんどい状態」と同社長は苦笑する。

 そんな苦境の中で見えてきた明るい光。新リーグ誕生を機に、チーム名も「高松ファイブアローズ」から「香川ファイブアローズ」に変更。入場料収入のアップや新規スポンサー獲得に向けて攻勢をかけ、「なんとか泥の中から抜け出したい」と力を込める。

 チームは9日に高松市内で新体制発表会を開き、11人の選手が真新しいユニホームとともに紹介された。昨季から残ったのは2人だけで、9人が新加入。同社長は「Bリーグが始まり、結果を出さないといけないシーズン。勇気を振り絞って血を入れ替えようと決断した」と説明した。

 将来的には「ユースチームやアカデミーをつくってピラミッド型の組織を整え、地元から多くの選手を輩出できるようなクラブにしたい」と構想を描く。B1昇格も大きな目標だが、それを実現するためにはリーグが求める経営状況や入場者数、ホームアリーナの規模など多くのノルマをクリアしなければならない。

 資金繰りに悩まされゆっくり休む間もないが、キャリア官僚の職を捨てて選んだ道に「後悔はまったくありません」と同社長。そして「プロ野球やJリーグに追いつけ、追い越せの気持ちで頑張ります」。大きな夢と情熱を抱いてBリーグ開幕を迎える。(デイリースポーツ・浜村博文)

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