綱とり稀勢の里まさかの黒星発進 自らお仕置き?支度部屋で「ゴチン!!」

 「大相撲秋場所・初日」(11日、両国国技館)

 3場所連続で綱とりに挑む大関稀勢の里(30)=田子ノ浦=は東前頭筆頭隠岐の海(31)=八角=に寄り切りで敗れ、手痛い黒星スタートとなった。横綱鶴竜は小結栃煌山に押し出され、大関照ノ富士は西前頭筆頭嘉風に寄り切られるなど、白鵬不在場所は初日から波乱の連続となった。横綱日馬富士は小結魁聖を押し出し、2場所連続優勝へ好発進した。

 稀勢の里は自らに怒っていた。風呂から上がると「はー」とため息。口を真一文字に結びうつむいたまま、質問には無言。最後に立ち上がると、自らへのお仕置きのように右手で右膝を殴りつけた。「ゴチン!!」。支度部屋に鈍い音が響いた。

 3場所連続綱とり挑戦の重圧は半端ではないのだろう。先場所までの強い大関とは別人のように弱かった。立ち合い、もろ差しを許し、不利な体勢から強引に抱えて出た。残されると逆に回り込まれて棒立ち。なすすべなく土俵を割った。

 大歓声の館内が一瞬であ然、ぼう然となった。前3場所は13勝2敗、13勝2敗、12勝3敗。今度こそと、自身の夢と日本中の期待を背負った初優勝&綱とり。“天敵”の白鵬不在という追い風もあったが、いきなり暗雲がたちこめた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「硬かったな。粘り強く、初日に一つ落としてもチャンスはあると思う」と気持ちの切り替えを求めた。横綱審議委員会(横審)の守屋秀繁委員長はあきれ顔。2日の稽古総見で2勝10敗とふがいない内容だったことを挙げ、「想定内の負け」とバッサリ。横綱昇進に関し、「もうない。まあ、もうない、ということはないけど、非常に厳しい」と、辛らつだった。

 今場所から稽古場の壁に先代の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の遺影が掲げられている。朝稽古では四股、鉄砲など入念に確認し「いい状態」と話していた。前を向いて立て直すのみ。残り14日間、見守る師匠に、もうふがいない相撲は見せられない。

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