本田真凜、脱天才へ“練習通り”の演技を
「彼女は天才だ」-。関係者はそう口をそろえる。練習はあまり好きではないのに、なぜか練習以上の力を試合本番で発揮してしまうのだ、と。
昨季のジュニア世界選手権で優勝し、一躍トップスケーターの仲間入りをした本田真凜(15)=大阪・関大中。妹の望結(12)が有名子役であるという“スター性”も光るが実力もピカイチだ。演者のDNAが共通しているのだろうか、天性の表現力は真凜の大きな武器。表情、いや、立ち姿だけで雰囲気を醸し出せる不思議な力を持っている。
そんな真凜が“初めて”つまずいた。9月9~11日、ジュニアグランプリシリーズ日本大会。SPでジャンプにミスが出て、5位と沈んだ。「どうしても練習以上を見せたいって思ってしまって。それが一番いけなかったかなと思います」。初めて感じる気持ちだったという。
その後浜田コーチのアドバイスを受け、気持ちを切り替えて臨んだフリーで自己ベストを更新する渾身の演技を披露。2位に食い込み、シリーズ全7戦で上位6人が出場するジュニアグランプリファイナル進出にも望みをつないだ。
この大会を終え、真凜は「練習してきたことがそのまま演技に出せるわけじゃないんだなって分かった」と言った。ジュニア女王となった昨季は、練習で一度も「ノーミス」の演技がなかったのだという。練習でできていない状況なのだから、本番で失敗しても仕方ないと思えるし、さほど悔しくもなかった。「ノーミス」が大会本番でようやく見られることも珍しくなかった。
しかし今季は違った。練習で何度も完璧な演技ができていた中で、本田は初めて“練習以下”の演技を経験した。そんな失敗を「予想していた」と断言する浜田コーチは「練習は上手になるけど、試合でしか強くなれない。こういう経験をするしかないんです」と言った。
「自信満々でここ(大会)に入ってきたけど、わたしはずっと危ないと思っていたし、2年目ってそんなに甘くない。特によかった次のシーズンは、アイスショーもたくさん出ていて、基本的な練習も足りていなくて。この試合に対しての準備も遅れていたので、危ないなと思っていた。本人にしたら初めてだから、経験してそれをプラスにしていって欲しい。ちょっと懲りてくれたかな」(浜田コーチ)。本当に練習が足りているときは、緊張しても体が動くのだという。
真凜は「まだ努力が足りないなって分かった」と話していた。天才なんて軽々しく言っていいものと思ってはいないが、確かに彼女は未知の力を発揮する“天才”なのかもしれない。ただそれも土台があってこそ。大事なのは、今回痛感した努力不足を克服していくことだ。
浜田コーチは苦笑いで言う。「すごくいい子なので、素直にすぐ反省するけど、すぐ忘れるんです」。これが懸念で終わるなら、真凜はきっと「天才」とは呼ばれなくなるのだろう。次戦は9月21日からのジュニアグランプリシリーズ・スロベニア大会。「練習通り」の演技を見せてほしい。
(デイリースポーツ・國島紗希)