元GPライダーの青木拓磨、レーサーとパラアーチェリーの二刀流に挑戦

 元グランプリライダーで現在は車いすレーサーとして活躍する青木拓磨(42)がパラアーチェリーに挑戦中だ。今年2月に本格的に始め、今月25日に埼玉県秩父市で開催される埼玉県室内アーチェリー大会で競技デビューする。本業のモータースポーツも活動を続け、洋弓との“二刀流”に挑む。

 長い静寂の中、勢いよく矢が放たれる。片方の目を閉じて標的に狙いを定めていた拓磨もほとんど表情を変えない。

 「静のスポーツは難しい。集中力が大事だし、指先とか手首とか小さな筋肉を繊細に使いこなさないといけないから。それに僕は腹筋や背筋がうまく使えないので体を安定させるのに一苦労」

 中学時代から弓道に興味があった。が、当時はミニバイクなどのレースで多忙を極め、他のスポーツをする余裕はなかった。ところが今年初めに転機が。テレビ番組で知り合った2004年アテネ五輪銀メダルの山本博氏(54)に本格的にアーチェリーをしたいと打ち明け、2月ごろから手ほどきを受けるようになった。

 2輪時代は名門ホンダのエースだった。1997年にロードレース世界選手権にフル参戦。最高峰の500cc(現モトGP)クラスで3度表彰台に立った。アクシデントが襲ったのはその後だ。98年2月にテストコースで競技用バイクを走行中に転倒。脊椎を痛め、下半身が不自由になった。

 それでもレースを諦めず、今度は4輪の世界に転身。オフロードを走るラリーを始めた。車両はハンドル周りでブレーキやアクセルを操作する特別仕様。09年には世界一過酷といわれるダカールラリーにも出場した。今年に入って世界格式レースにも出られる国際B級ライセンスを発給され、国際選手権「アジアン・ルマン・シリーズ」にも参戦した。

 今後もモータースポーツをメインの活動に据え、パラアーチェリーはトレーニングの一環として打ち込んでいく。4年後に東京パラリンピックが控えるが、本人は至って謙虚。「『目指す』けど、『出る』なんて口が裂けても言えない。だって代表になるにはいい成績を残してまずは強化選手に選ばれなければならないので。欲張らずに頑張る」と照れ笑いだ。

 年末はアーチェリーのデビュー戦となる25日の大会に向けて練習漬けの日々だ。モータースポーツとアーチェリーで二刀流。異色のアスリートが誕生する。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

スポーツ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス